小森陽一の『漱石深読』をどう読むか⑧ そこまでは気が付いたか 一語一語テキストそのものから括弧書きで引用を繰り返しながら丁寧に筋を追う書き方で『門』『彼岸過迄』に関しては、読み落としはあるものの、あからさまな間違いといえるような記述は見つからなかった。 おそらく『門』の参禅問題や、『彼岸過迄』の須永市蔵が働かない理由などが理解されるようになるにはあと五十年はかかるだろうから、すべては私の死後の世界でのことになるだろう。 ところで一語一語テキストそのものから括弧書きで引用を繰り返しながら丁寧に筋を追う読み方で見落とされることがあ