知的障害をもつ子どもにとって「選ぶ」のは容易くない。提示されたものの中から「選ぶ」というのもひとつの能力で、「選んでいい」ということがわからない子もたくさんいる。「人に選んでもらう」ことに安心して済ませる生存戦略の子もいる。 しかし、最もしんどいのは「この中には自分の選びたいものが、ない」と表現するのが難しい子だろう。 その子は無理をして選ぶ。本人が選んだのだからと周囲は与える。「選べた」ことを喜んで与える。しかし、本当は望んでいないから、本人は我慢しながら受け入れる。あるいは、どうしようもなくなって爆発する。我慢が積み重なって、数年がかりの時間をかけた大爆発はしばしば強烈だ。 もっと複雑な形もある。その「瞬間」の希望として選んでいるが、先々のことまで考えずに選んでしまい、混乱する。いつものやり方から外れていき、どちらへ進めばいいのかわからなくなる。もとの軌道に戻ることができない。混乱のあ