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ブックマーク / note.com/antitrenchmania (17)

  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #23|Anti-Trench Mania|note

    #23 不特定のあなたのこと わたしが、あなた、と心のなかで呼びかけるとき、あなたのことはまだ知らない。 「知らない人」には二種類あって、まずひとつが町や電車のなかですれちがう、具体的な姿がみえているけれど関わることのない人。 SNSで見かける人もここに入る。日常でたまたまふれあう膨大な人のなかで、関わりが極端に薄い大多数の人、という感じだろうか。この人たちのことは、出会ってはじめて「知らない人だ」と認識することになる。 そして、もう一種類は、まったく姿のみえない不特定のだれか。 出会うこともなく、具体的に「この人は知らない人だ」と認識することもない、わたしのイメージのなかにしかいないけれど、でもおそらくどこかには存在しているであろうだれかだ。 「姿がみえない不特定のだれか」は、大多数のことではないが、個別の存在でもない。「だれかそういう人もどこかにいるだろうなあ」という憶測、というとわか

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #23|Anti-Trench Mania|note
    sukeroc
    sukeroc 2018/10/08
    最終回もとても良かった。誠実な言葉を、身を削りながら選んで綴っていくような連載でした。
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #21|Anti-Trench Mania

    #21  わたしではないわたしのこと 都心から川を渡ったところにある街に、十二年ほど暮らしている。なので、ほとんど毎日電車で川をまたぐことになる。 線路は架橋を通っていて、日が暮れてから電車に乗ると、向こうに街明かりが見える。それを、十二年のあいだいつもすこしずつ、平熱を超えない程度に好きでいつづけてきた。川の上を通る時だけは、iPhoneや、ガラケーや、iPod、文庫、そのときどきに見ていたものから、いっとき、目をあげる。そのくらい。 その日は終電が近かったのか電車が空いていて、席に座って見るともなく川を見ていたら、隣に座ってきたのは高校生のときのわたしだった。よれた制服に、左右で視力が大きく違うせいで目の大きさがちがって見えるめがね、穴のあいたローファー、てきとうな風体のやつだ。 「そっちはどう?」と声をかけると、「さんざんですよ」という。 「なんで敬語なの?」と聞いたら、「心を許せ

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #21|Anti-Trench Mania
    sukeroc
    sukeroc 2018/09/02
    “でも、すぐに思いなおす。ちがうのだ。その人はわたしではなく、過去のわたしはどこにもいないままで、あくまで、いまこのときのその人と、わたしがあるだけ。そのことが、わたしはすこしうれしかったりする”
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #20|Anti-Trench Mania|note

    #20 中二のときの担任のこと いまや、うつ病の人を「がんばれ」と励ます人はいなくなった。 と、言いきってしまうのはさすがに言いすぎで、いまだ無理解は蔓延っているのだろうし、さらにそもそもがそれだけで済む問題でもない、というのはもちろんのこととして、でも、セクハラや痴漢と呼ばれることをおそれて女性のからだに触れなくなった男性は多いだろうし、軽々しく「ホモ」とか「レズ」とか口にする人も、まあ、減ったような気がする。 完全ではないけれど、そういう知恵はすこしずつ根を広げている。個人が個人を尊重するための、マニュアルと呼ぶほどでもない、了解みたいなもの。それを窮屈だと言う人がいるのも知っているけれど、女性で、不安定で、コミュニケーションが苦手なわたし個人にとっては、おかげでずいぶん暮らしやすくなった。 自分でも、すんでのところで言動を取りやめることがある。子どもに対して、両親が健在であると思い込

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #20|Anti-Trench Mania|note
    sukeroc
    sukeroc 2018/08/19
    言葉は体温に勝てないのだろうといつも思ってしまう “だとしたらいつか、ふれてはいけない誰かにふれるときが、わたしにも来るのだ。ことばへの信頼を捨て、押しだまって、にらみあうように。”
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #17|Anti-Trench Mania

    ※リンク先にこの記事についての撤回文「性暴力を許そうとすることの誤謬について」があります。合わせてお読みください。 #17 . ナンパしてきた男のこと 男女の友情を信じるか、と聞かれると、バイセクシャルなので信じざるをえない、と答えることにしている。 とくべつ隠してもいないし、かといってとくべつオープンにもしていないけれど、バイセクシャルだ。はじめて好きになったのは女性で、男性とも女性とも交際したことがある。 なので、性別だけで見たときに好きになる可能性があるからといって、友だちになれないと決めつけてもらっては困る。わたしだけ誰とも友だちになれなくなってしまう。 性の話はほんとうに個人によって違うので、これはあくまでもわたしの場合だが、まずわたしはバイだからといって全員が性愛の対象になるわけではない。好きになる相手とそうでない相手との線引きが、性別とまったく関係ないところにあるだけだ。好き

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    sukeroc 2018/06/27
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #16|Anti-Trench Mania

    #16 窓付きのこと インドアなわり、アニメや漫画ゲームに造詣が深くない。 気質じたいはまちがいなくいわゆる「オタク」に近いので、気のあう友だちのなかにはそういう文化をこのむ人もよくいる。そこから知識こそ入ってくるものの、自分がのめりこむことはほとんどない。 だから、好きなアニメのイベントに行ってはしゃいでいる友だちを見てうらやましくなったり、数少ないインドア友だちのあいだでさえ話題に追いつけなくてちょっと浮いたりする。 と、思っていたら、高校生のとき、いきなりひとりの女の子にのめりこんだ。 その子、名を「窓付き」という。「ゆめにっき」というフリーゲームの主人公である。 正確には、それが名なのかどうかはゲーム内で明言されていないけれど、ファンはみな便宜上窓付きと呼んでいる。 このエッセイでもたびたびふれてきたけれど、高校生のとき、というのはわたしにとって暗黒の時代で、とにかくなにをやって

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    sukeroc 2018/06/10
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #15|Anti-Trench Mania

    #15 母のこと わたしの知っている花の名前のほとんどは、母の口から覚えたものだ。 母は、売っている花と道端に咲いている花とをひとしく愛する人で、わたしの幼稚園の送り迎えのあいだ、ずっと足もとを指さしながら歩いた。おおいぬのふぐり、はくもくれん、かたばみ、ほとけのざ、ねじばな、わたしもすぐに覚えて、受け売りで幼稚園の友だちにじまんした。 毎年どくだみが咲き始めると、そのころのことをよく思い出す。春を終えて梅雨に入る前、ちょうどいまごろだ。 「どくだみはくさいから嫌われてるけど、花はかわいいでしょ。十字架のかたちの花なんだよ」 それが、キリスト教徒でもあった母の決まり文句だった。どこか教会の集まりでそれを聞いてきて、ずいぶん感銘をうけたらしい。そういいながら母はよく、どくだみの葉っぱをいちまい摘んで手のなかで叩いて遊んだ。そうするとにおいが立つのだ。そして、ひらいた手を幼いわたしに嗅がせ、お

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    sukeroc 2018/05/27
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #14|Anti-Trench Mania

    #14  体の具合のよくない生徒のこと このエッセイを書きはじめて半年になろうとしている。 「書く」こと自体はなにかしらずっとしてきたものの、特定のテーマで定期的にまとまった文章を発表し続けたのははじめてだ。意外と書きつづけられるものだなあ、と思っていたら、ここ二、三回で急速に書けなくなった。わたしは大概ぐうたらなので、怠惰によって「書けなさ」を味わうことはこれまでいくらでもあったのだが、今回はまた違いそうだ。 原因はなんとなくわかっている。 二月、このエッセイの第九回が、「バズった」。ツイッターで数万リツイートされ、アクセス数が六桁を超えた。ニュースで知った見知らぬ男性を取り上げた回だった。三十九歳の誕生日にファーストクラスに乗ったのに祝われなかったことに落胆し、レビューサイトに最低評価を書き込む男性。たしかにそれは失敗だったと思うけれど、彼に対するSNS上でのバッシングがあまりに多く、

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    sukeroc 2018/05/13
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #13|Anti-Trench Mania

    #13 相方のこと チャーハンはすごい。 この上なくふさぎこみ、わたし以上に生きている価値のない人間がいるだろうか、いやいないに違いない、次に誰かに迷惑をかける前に先んじて消え去ってしまいたい、という思いでいっぱいになったとき、わたしはチャーハンをべにいくことにしている。べつに行きつけの店があるわけではない。チャーハンというべ物に対する強いこだわりもない。なので、目についた適当なチェーンの中華屋で事足りる。 五百円前後の安価なチャーハンはだいたい、どこでべても想定のやや下くらいのおいしさである。油の酸化したにおいがしたり、胡椒がききすぎていたり、かならず何かしら欠点がある。べ残すほどまずくもないけれど、端的にいうと、どうでもいい味がする。 それをプラスチックのレンゲでべながら、わたしはめそめそ泣く。そのうち鼻がつまってきて、なおさら味がなんでもよくなる。わたしより後に入ってきたニ

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    sukeroc 2018/04/22
    チャーハン文学だ
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #12|Anti-Trench Mania

    #12  電車のなかで手を握ってきた女の子のこと めずらしく、夕方に帰途についていた。たまに日が暮れる前に地下鉄に乗ると、地下を走っていた電車が地上へ躍り出る瞬間が見られて、得した気分になる。その日も、暗闇をぬけ、液体のような西日で満ちていく車両の揺れに目を細めているところだった。 わたしは端の席に座っており、すぐそばに小学生くらいの子どもが立っていた。その子が、やにわにこちらを向き、わたしの左手をゆっくりと握った。 えっ? 青い子ども用手袋の手のひらにゴムのすべり止めがついていて、それがみょうにしっかりとわたしの素手の手のひらをつかまえていたのを覚えている。えっ? 手を握られている。 ほかの乗客はほとんどいなかったような気がする。突然のことに気が動転し、振り払うでも、話しかけるでもなく、子どもの顔をおそるおそる見上げた。髪は短く、手ぶくろも男の子用に見えるけれど、顔立ちは女の子だった。小

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    sukeroc 2018/04/01
    “突然、ときに予想だにしない方向から、ときに大切な人のなかから、知らない人があらわれる。その手を握りかえせるかどうか、問われているように思えることがある”
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #11|Anti-Trench Mania

    #11  もういない人のこと その日、友だちが死んだことを知らせるメールは、朝早く、わたしが眠っているあいだに届いた。大学の夏季休暇中で、予定が午後からだったので昼まで寝ていた。まだラインが普及しきる前だった。 目がさめたとき、メールの内容を確認して跳ね起きたのち、なぜか間もなくふたたび眠った。二度寝を終えると、衝動的に美容院を予約して髪を切り、そのあとは予定通り卒業アルバムを受け取るために母校へ行って帰ってきた。 記憶にあるかぎり、わたしはその日一度も泣いていない。 夜になってようやくごくわずかな共通の知りあいに訃報を伝え、あらためてメールを読み返しても、頭が日常モードから切り替わらなかった。寝ぼけてメールを開いたときの半分夢のような感覚からなにも変わらない。連絡が来た時点で、彼が死んでから一カ月以上経っていたことも大きいかもしれない。 自殺だった。自殺に遅いも早いもないけれど、でもまだ

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    sukeroc 2018/03/18
    読みながら「パレード」のことを思い出していた
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #10|Anti-Trench Mania

    #10 「テルヨさん」のこと テルヨさん、という人のことを、わたしはほとんど何も知らない。おそらく川崎市に住んでいて、おそらく西荻窪駅を使っている。おそらく女性で、おそらく年配で、そしておそらく困っている。それだけだ。 背でうつむきがちだからか、わたしはよく落とし物を見つける。するとだいたい拾ってしまう。来出会うはずのなかった他人の痕跡にふれるのがなんとなく好きなのだ。「自分とは関係ないところで営まれている誰かの生活」みたいなものに、みょうな愛着を感じるらしい。 だから、定期入れや携帯電話を拾うと、当は見ないほうがいいのかもしれないけれど、つい中身を覗き見したくなる。そして、落とした人の風体を勝手に想像し、名前を心のなかで呼び、落とし物が無事に手元に戻るよう願う。 受験生だったころ、塾の帰りに西荻窪駅前で拾ったのが、川崎市発行、テルヨさんの名前入りのシルバーパスだった。 わあ、たいへ

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #10|Anti-Trench Mania
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    sukeroc 2018/03/05
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #9|Anti-Trench Mania

    #9 見知らぬ三十九歳のこと 大人になりそこなってきた、という体感がある。二十三歳までにこなさなければいけなかった儀礼のいくつかをスルーしてしまった、というほうが正確かもしれない。 たとえば、大学に入るまで、友だちと夕べたことがなかった。どうやらみんなは高校の放課後に買い物をしたりゲームセンターに行ったりしているらしい、そして家族ではなく友だちと夜ご飯をべることがあるらしい、そう勘付いてこそいたものの、自分とは関係ない話だと思っていた。親が門限に厳しかったのもあるかもしれない。ラーメンも牛丼も、成人したころにようやくハラハラせずにべられるようになった。 スポーツも授業以外でしたことがない。就職活動をしていると、じぶんの「リーダーシップ」のなさに目を見張る。どうやら、みんなはスポーツにかぎらず、なんらかのチームプレイを経験して育ってきているらしい。 まわりが初体験がどうセフレがどう

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #9|Anti-Trench Mania
    sukeroc
    sukeroc 2018/02/18
    “築きあげてきた大人の層が、そんなふうに思いもよらないことでぼろぼろ崩れるときがある。そういうとき、わたしたち周回遅れはあまりに無力で、これまで自分の表面にあったものは繕いだらけだったのだと痛感する”
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #8|Anti-Trench Mania

    #8 手がかかる友だちのこと おまえ、とうとう幸せになるんだね、エモい、いや、超エモいわ、 半年以上ぶりに会った友だちにそう言いまくっていたら、「エモいってなに? でも、なんかうれしいわ」と笑われた。うーん。エモーショナル。なつかしくなったり、感傷的になったり、ちょっとさみしかったりするんだよ、と答える。 友だちはかわいい。まず単純にルックスがよい。化粧がじょうずで、眼鏡をかけてもかけなくても魅力的で、上目遣いや含み笑いがよく似合う。でもそれだけじゃなくて、大きく口をあけて笑うこともできる。 ◆ 大学に入ってすぐ知りあった彼女は、よくわたしのところへ相談ごとを持ち込んだ。そのほとんどが恋愛関連だった。人が恋愛好きだった上、顔のかわいさと優柔不断さがそれぞれ悪いように作用するのか、彼女は男との関係をこじらせがちだった。 じまんでもないけれど、わたしはさして恋愛関連に明るくない。なぜか頼りに

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    sukeroc
    sukeroc 2018/02/04
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #7|Anti-Trench Mania

    #7   傷つけたかった女の子のこと だれかを傷つけたいという思いが強まると、少女期のわたしはたびたび、ほとんど熱狂に近い昂奮状態に陥った。 小学校高学年から中学生くらいまでだろうか。授業中、傷つけたい相手のことを考え、いたずらに敵愾心を高めて遊ぶ。相手に選ぶのは自分や友だちにひどいことをした教師やクラスメイトが多かった。 実際に行動に移す気はほとんどなかったと思う。悪口を共有したり、仲間を作ったりもしなかった。ただひとりで夢想し、ネットの猟奇犯罪記事を乱読した。そういうときには、酸素が薄く感じ、目がいつもよりよく乾いた。 あれは、なんだったのだろう。 高校に上がるころには、以前にこのエッセイにも書いた「世界憎み力」に取って代わられて、この悪習は鳴りをひそめた。世界を憎む気持ちが光の差さない湿ったぶぶんから生まれてくるとしたら、ひとりを傷つけようとうねるあの烈しい気持ちは、火に近かった。

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    sukeroc
    sukeroc 2018/01/22
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #6|Anti-Trench Mania

    #6  弟のこと 五歳離れた弟がいる。たったひとりの弟だ。 幼稚園のころ、「きょうだいがほしい」とねだると、若い日の母はきまって「神さまに妹か弟が欲しいってお願いしたらもらえるかもしれないよ」と言った。 だから、母がほんとうに妊娠したとき、この子はわたしが望んだからやってきたんだと思った。 ある日、朝起きたら、目の前に母の足がころがっていて、あ、また寝てるあいだにひっくり返っちゃったと思いながら起き上がったら、頭が母ではなくてギョッとした。母のパジャマを着た、母の妹だった。母が深夜に産気づいたのでうちに呼び出され、病院へはこばれた母と入れ替わりにわたしを預かっていたらしい。 そのときの、朝にぽかっと穴があくような感じが、弟が生まれる、ということがはじめて迫ってきた瞬間だったと思う。 わたしに望まれて生まれてきた弟は強かった。 運動がからきしダメなわたしと違い、ハイハイの段階ですでに速かった

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #6|Anti-Trench Mania
    sukeroc
    sukeroc 2018/01/08
    “仮に、擁護しあうことが家族の持っている機能のひとつだとしたら、家族にもそのように閉ざされる瞬間がある。そして、それがときどき愛と呼ばれる。”
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #5|Anti-Trench Mania

    #5 ほとんど話したことのないクラスメイトのこと 世界憎み力(せかいにくみりょく)、みたいなものが減退しつつある。 いや、違う、待ってほしい。一行書いただけで、「ならばお前は無価値だ」という声と、「それにしては怒りすぎでは?」という声が左右から同時に聞こえてくるような気がする。ちょっと待ってほしい。どちらの言い分もよくわかります。 いきなりテンパっていてすみません。この告白がどれほど勇気を要するか、わかってほしい。ほとんど懺悔に近い。 仮に。理不尽な目に遭ったとき、自分を守るために自分以外のすべてを憎み、ギリギリ生きていく原動力に変えるエネルギー、みたいなものが存在するとする。 そしてそれを、仮に「世界憎み力」と呼ぶとして、わたしの世界憎み力のピークは十七歳から二十歳の三年間くらいだった。 高校生のときだ。中高一貫の女子校だったので、まるまる六年間を同じ女の子たちと過ごした。 友だちが少な

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #5|Anti-Trench Mania
    sukeroc
    sukeroc 2017/12/24
  • あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #4|Anti-Trench Mania

    #4 塾に来なくなった生徒のこと いきなり特技じまんになるけれど、わたし、人より待つのが得意。好き、といってもいい。 電車を待つときものんびりしたものだし、二、三時間の遅刻ならだいたい笑って迎えられる。頼んだグラタンがなかなか出てこないのも、高速バスの中に半日いるのも平気だ。 これは、暇をつぶすのが好きゆえの特技だと思う。街中でもは読めるし、詩も書けるし、ラインも受け取れるし、考えごともできる。どうせ普段からわたしのやりたいことはそれでほとんどだから、「この時間があればアレもコレもできた……」なんていらいらせずに済む。 それから、「わたしいま、待っている」という状態そのものも、よい。 常に「なにかしなくては」と急いているぶん、その状態がかえって落ちつく。「待っている人」である以上、その上何をしてもしなくても、そこにいる意味があるような気がして、気やすく道なんか眺めていられるのだ。 待って

    あなたになれない わたしと、わたしになれない あなたのこと #4|Anti-Trench Mania
    sukeroc
    sukeroc 2017/12/11
    とてもよかった
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