・光媒の花 これは抜群に面白い。おすすめ。 「この全六章を書けただけでも作家になってよかったと思います。」と、ベストセラー連発の道尾秀介にとっても、これは会心の作品であるらしい。 ある街を舞台に、表向きは普通に見えながら、心に深い闇を抱えて生きる人たちの連作群像劇。6つの物語の主役たちは年齢性別や職業はさまざまで、同じ街に住んでいるという点をのぞいて深いつながりはない。前の作品の脇役、端役だった人間が続く作品では主役になる。次は誰の視点に飛ぶのかなあと想像しながら読むのが楽しい。 「光媒の花」は、「風媒花」(風が花粉を運ぶ花)や「鳥媒花」(鳥が花粉を運ぶ花)から連想した造語らしい。人生の光と闇を媒介として、6つの物語の花を受粉させていく一匹の蝶の目線で、読者は前の花から次の花へと跳んでいく。 悪い人だと思っていた人にもそれなりの理由があったり、事故だと思っていたことが事件だったり、ひとつの