<危機的な状況と二つの「自由シリア軍」> ――シリアにおける政府軍と反政府勢力の衝突はもはや管理不能な状況に陥っているのか。 社会暴力はますます激化し、反政府運動が展開される地域が拡大し続けている。別の言い方をすれば、ますます多くの人が武装し、銃を手にしている。 二つの集団が武器を調達し、武装強化している。政府軍から離脱した兵士たちが、武器を携えて「自由シリア軍」に参加する一方、一般民衆も市民軍を組織し、彼らも自分たちのことを「自由シリア軍」と呼んでいる。市民軍は、政府軍のスナイパー、政府に忠誠な部隊の軍事作戦からデモ参加者を守ろうとしている。現在、レバノンとの国境地帯を中心に、積極的な活動をみせているのは、この市民軍だ。国境地帯はもはや政府の管理下にはなく、人々はレバノンから自由に武器を調達できる状況にある。 さらに、政府軍を離脱した兵士で構成される「自由シリア軍」は軍の兵器庫を攻
シリアへの軍事介入を求め始めた反アサド勢力 ――「保護する責任」とアラカルトの軍事介入 Syria: Military Intervention A La Carte いまやシリアの反体制派集団は国際社会に対して軍事支援を強く求め始めている。「自由シリア軍=FSA」のリヤド・アル・アサド大佐は「必要なのは国際社会が(われわれの地上での軍事活動への)後方支援を提供してくれることだ。さらに飛行禁止空域の設定、バッファー(緩衝地帯)の形成、そして現体制にとって重要とみなされる戦略ターゲットへの空爆も望んでいる」と発言している。だが、民間人に対する攻撃がこれ以上エスカレートし、外交的、経済的制裁ではアサドの行動を変えることができなければ、軍事介入を選択肢の一つとして検討せざるを得なくなるとはいえ、話は簡単ではない。反体制派が外国に対して「軍事支援を選択的に」求めているからだ。彼の発言は、いまや鮮
<中東和平交渉とハマスを両立させるには> イスラエル・パレスチナ和平を阻む最大の障害は、パレスチナがヨルダン川西岸の入植地の解体を求めていることでもなければ、イスラエルと西岸の多くを隔てる隔離壁の存在でも、あるいは、イスラエルの政治が右傾化していることでもない。それは、150万のパレスチナ人が暮らすガザ地区でハマスが事実上の政府として地位を確立しつつあることだ。 ハマスは、ガザからほぼ定期的にイスラエルをロケットで攻撃するか、他の勢力がガザを拠点にイスラエルを攻撃するのを認めている。この現実が、より穏健な立場をとり、現在は西岸とガザの一部を統治するマフムード・アッバスとサラーム・ファイヤード率いるパレスチナ当局(自治政府)にとって、高まる一方の脅威となっている。 パレスチナ当局の指導者はイスラエルとの交渉と制度構築を開始することがパレスチナ国家を手に入れるための最善の方法とみている。
<欧米日のソブリン危機> トーマス・グローサー クリスティーヌ・ラガルドはフランスで蔵相を務めた最初の女性。弁護士でもあり、大手の法律事務所ベーカー・マッケンジーのチェアーパーソンの経験もある。弁護士事務所のトップがいきなりフランスの閣僚になることなど通常はあり得ない。見事なキャリアを持つ人物だ。今日はIMF専務理事に就任後、彼女にとって初めてのスピーチになる。クリスティーヌ・ラガルド ありがとう。 今日は世界経済が直面している問題について話したいと思う。世界はソブリン債務危機、経済の低成長、社会の不安定化などの問題を抱え込んでいる。 現状における最大の課題がソブリン債務問題だ。ヨーロッパだけでなく、アメリカでもソブリン債務が問題になっている。 ヨーロッパの場合、ソブリン危機に陥ったギリシャに最初の支援策がとられたのは2010年5月。その後、ヨーロッパ周辺国のシステミックな問題に対応す
「南シナ海での中国の行動は、この国が今後影響力を高めていくにつれて、国際的にどのような行動をみせるのかを占う水晶玉のようなものだ。残念なことに、これまでのところ、好ましくない未来が映し出されている」(J・クランジック) ―― 豊かな石油資源が眠っていると考えられる、南シナ海の領有権をめぐって中国と近隣諸国の対立がエスカレートしつつあるが、現状をめぐる重要なポイントはどこにあるのか。 各国が南シナ海の領有権をめぐって異なる解釈をし、衝突している。これ自体重要な展開だが、中国にとって一連の行動は「自国が大国であることをみせつけるための第1ステップ」としての意味合いもある。南シナ海での中国の行動は、この国が今後影響力を高めていくにつれて、国際的にどのような行動をみせるのかを占う水晶玉のようなものだ。残念なことに、これまでのところ、好ましくない未来が映し出されている。 ―― 南シナ海問題の基本に
<バイオマスの可能性> 石油は紛争を引き起こす火種であり、その理由は明白である。すべての人々がエネルギーを必要としているのに対して、世界の交通・運輸用の資源が、比較的少数の国々に集中的に存在しているからだ。世界に残された石油資源の三分の二以上は、(カスピ海周辺地域を含む)中東地域にある。つまりこれは、その他の世界が、この地域にありがちな略奪者や、基盤の弱い独裁者に依存していることを意味する。 この好ましくない依存の構図が存在するために、アメリカの軍事戦力は湾岸地域につなぎ止められ、外交政策目標も妥協を強いられている。それだけではない。開発途上国は、高価なドル建ての石油輸入に必要な資金を捻出するために、低価格で消費財や農産物を売らざるを得ず、その結果、こうした国々は大きな債務を抱え込んでしまっている。 加えて、石油は環境問題とも折り合いが悪い。温室効果ガスの増大が壊滅的な気候変動を引き起こす
フォーリン・アフェアーズ・ジャパンのホームページ上で発表した東日本大震災に関する論文を 3つのカテゴリーにまとめて掲載しております。
日本の原発危機の教訓 ――世界は原子力から離脱すべきか、いなか The Dilemma of Nuclear Energy 日本の原子力産業が全面的な危機に直面するなか、世界でも原子力エネルギーの安全性と現実性に関する懸念が広がりをみせている。中国は原子炉開発計画を凍結し、ドイツは七つの原子炉を閉鎖し、既存の原子力施設の操業認可期限の延長を検討する路線に3カ月のモラトリアムを適用した。 メルケル独首相は、この政策シフトはドイツが「少しでも早く再生可能エネルギーの時代に到達するために」必要だったと述べている。 だが、アメリカのステファン・チュー エネルギー省長官はこうした立場に冷水を浴びせかけた。「魔法の杖のような代替策が存在することを夢見ても、人々が暮らす住宅の空調を動かす電力を提供できるようになるわけではない。行くべきところへわれわれを導いてくれるわけではないし、雇用を提供する生産活動
2010年12月にチュニジアで起きた民衆デモは数週間に及び、2011年1月についに政権は崩壊し、ベンアリ大統領はサウジに亡命した。このチュニジアでの展開が北アフリカ他の独裁国家でも民衆蜂起を誘発するのではないかといまや広く考えられている。中東問題の専門家であるエリオット・アブラムスは、「民衆蜂起の高まりを前に、チュニジアの軍隊は組織としての生き残りを重視し、ベンアリと彼の家族のために、数百人の市民を殺害すれば、軍に未来はないと判断し、これが、民衆が作り出した革命の流れを加速した」と指摘する。つまり、「他の中東の独裁国家でも、かりに民衆運動が起き、軍隊が独裁者の鎮圧命令を拒絶すれば、同じような展開になる」と語った同氏は、似たような展開になる可能性を秘めているのが、いずれも権力継承のタイミングにある「リビアとエジプトだ」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く