赤外分光法には様々な測定法があり,測定対象(サンプル)や分析目的等に合わせて使い分けることが出来ます。膜厚 1μm以下の薄膜試料の測定には,高感度反射法が広く使われていますが,最近では1回反射ATR法も利用されています。ここでは,高感度反射法と 1回反射ATR法を用いた薄膜試料の測定例や注意点についてご紹介します。 金属基板上薄膜の測定には高感度反射法が適しています。高感度反射法は入射角 70°以上の外部反射(正反射)法で,金属基板に対し垂直な方向に振動するピークが増強されます。これにより,入射角 10°前後の正反射法では測定できない薄膜のスペクトルを測定することが出来る方法です。 図 1は金メッキ上フィブリノーゲン単分子膜の高感度反射スペクトルです。入射角 80°にて測定しました。フィブリノーゲンは分子量約 34万,直径 9nm,長さ 45nmの棒状分子で,血液中に含まれる水溶性タンパク