財務省のように、分母を国民所得にして国民負担率を計算し、それが世界より低いから、増税すべきだというロジックに安易に乗ると、消費増税がベストな手段となってしまう。というのは、所得税増税も消費増税もともに、分子が大きくなるのは同じだが、消費増税のほうが分母を小さくするので、より国民負担率を引き上げることになるからだ。 いずれにしても、消費増税のために、財務省は都合の良い数字を出してくる。そして、欧州を例に挙げて、消費増税が必要という。その場合、欧州がなぜ消費税に依存するのかという理由は伏せられている。 欧州が消費税に依存せざるを得ないのは、それぞれが地続きの小さな国で、しかも人の移動の自由が確保されているという事情がある。このため住所を定めて徴収する所得税、資産税などの直接税にあまり依存できない。 そこで消費税に依存するわけだが、消費課税では格差問題への対応もままならない。 『21世紀の資本』
国民所得に占める税金や社会保険料などの割合を示す「国民負担率」が、2015年度は43・4%となり、4年連続で過去最高を更新すると財務省が見通している、という報道があった。 税金について議論するとき、財務省の資料に出ている国民負担率を持ち出すことが多い。 国民負担率の国際比較は、比較概念も統一されており、それなりに有用なデータである。それによれば、日本の国民負担率はOECD(経済協力開発機構)33カ国中7番目の低さである。 財務省は、国際的にみても国民負担率が低いのだから、もっと高めてもいいという魂胆なのだろう。 ただ、日本より負担率が高い26カ国中23カ国は欧州の国々で、日本より低い6カ国中には欧州の国は1つしかない。非欧州の先進国9カ国中では4番目に国民負担率が高い国であり、日本の国民負担率は決して低いとはいいがたい。 その上、国民負担率の定義では、分母を国民所得にするが、海外では国内総
6日までの日程でソウル市の朴元淳市長が日本を訪れたのに合わせ、東京都は2日、ソウル市と「道路陥没対応業務、技術的協力に関する行政合意書」を締結した。双方が都市の安全に向けて、お互いに技術を供与するという内容だ。道路陥没が社会問題となっているソウル市に、東京都が救いの手をさしのべた形だが、日本の道路点検・補修技術は韓国に比べ20年以上進んでいるとされる。相互協力とは名ばかりの“一方通行”の支援となりかねない。 ■ソウルの陥没、都道の100倍超 「地下調査はどこがやっているのか?」「事業者の選定は?」 東京都文京区の地下鉄春日駅前に近い道路を視察した朴市長は、同行した都の幹部に次々質問した。この道路は昨年、直径約2メートル、深さ40センチにわたって路面が陥没した現場だ。人や車両への被害はなく、まもなく復旧した都の対応は、今回、訪日した朴市長にとって最大の関心事だった。 近年、ソウル市では下水道
2014年の住民基本台帳に基づく人口移動報告で、東京圏への「転入超過」は19年連続となった。一極集中のメリットとデメリットを分析し、今後のあるべき姿を考えてみたい。 まず現象面からみると、首都圏への人口集中を諸外国と比較した場合、日本のように首都圏の人口比率が高くかつ上昇を続けている国は、欧米先進国ではなく、アジア諸国を含めても韓国のほかにはみられない。人口面だけではなく、東京は政治、金融面などでも集中がみられる。こうした特徴は世界ではあまり例がない。 東京圏では、(1)1990年以前は所得格差との相関が高く(所得が高まると人口流入が増加)(2)90年代以降は有効求人倍率格差との相関が高い(有効求人倍率が相対的に高まると人口流入が増加する)。 こうした現象について、経済学ではどのようにみているのだろうか。最適都市規模に関しては、「ヘンリー・ジョージ定理」が知られている。都市人口の増加が生産
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人やヨルダン空軍パイロットの殺害事件を受け、国連安全保障理事会は非難声明を発表、米軍を中心とする有志連合は「イスラム国壊滅」に向けて大攻勢を仕掛ける構えだ。一方、日本では、激動する世界情勢の中で、国民の生命と財産を守るため、首相直属の対外情報機関の創設を求める声が強まっている。米国のCIA(中央情報局)や、英国のMI6(秘密情報局)のような組織を創設することで、残忍・狡猾な国際テロ集団などと対峙しようという構想だ。 「政府の情報機能を強化し、より正確かつ機微な情報を収集して国の戦略的な意思決定に反映していくことが極めて重要だ。ご指摘のような対外情報機関の設置については、さまざまな議論のあるものと承知している」 安倍晋三首相は4日の衆院予算委員会でこう答弁した。警察官僚OBで「外事警察のプロ」である自民党の平沢勝栄衆院議員の「対外情報機関を創
「イスラム国」が、ジャーナリストの後藤健二さんを殺害したとする動画がインターネット上に流された。卑劣極まりない行為だ。テロリストの暴挙は決して許されるものではない。 世間には、この事案を「人質事件」として、一般的な誘拐・人質事件と同様に捉えている向きもあった。だが、これはテロである。わが国ではまだ、「事件」と「テロ」の区別がしっかり認識されていない。 テロの定義とは何か。これは各機関で若干違いがあるが、共通する大まかなくくりは、その行為が「政治上の目的を達成するため」「不安や恐怖を抱かせるため殺傷や破壊などの暴力行為を伴うもの」であることだ。つまり、通り魔による無差別殺人の類はテロとは呼ばない。 防衛省・自衛隊においては自衛隊法81条の2にその定義が見て取れる。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重
連載スタートのあいさつは省略して、「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件について書く。私は「イスラム国」とだけ書くのは、国家として認められたかような誤解を生むので反対である。以下、ISISとする。 犠牲となったジャーナリストの後藤健二さんらには、心からご冥福をお祈りしたい。テロリストの蛮行は決して許されない。そして、この結末について非難すべき相手を間違ってはならない。 確かに、ISISは動画で安倍晋三首相の政策に言及した。だが、彼らの理不尽な言い分に便乗して政権批判を行う人は「テロリストの共犯者と同じ」という自己認識を持つべきである。 世の中を恐怖で支配し、言論をコントロールするのがテロリストの目標である。彼らの主張に同調したり、恐怖心を無責任にあおる行為は、まさに援護射撃だ。テロに断固反対する人は常識として捉えてほしい。 人間は何か新しい行動を起こした直後に悪いことが起きると、「従来通り
フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本」が大ヒットし、本人も来日するなど話題になっている。一方で、氏の理論を“錦の御旗”のように利用しようとしたり、その主張を曲解しているような論調も目につく。 ある経済誌のピケティ氏へのインタビューでは、「日本は金融政策に頼りがちで、アベノミクスは資産バブルを誘発している」という趣旨の質問に対し、ピケティ氏は「そのやり方は間違いだ。われわれは税務政策に比べ、金融政策に対してあまりに高い期待を持っている」などと答えたとしている。これを読むとピケティ氏はアベノミクスや金融政策に否定的だという印象を受ける。国会でも、同種の質問が出ている。 しかし、ピケティ氏の著書を読むと、2%のインフレ目標に関連した記述はあるが、そこではインフレ目標を評価こそすれ、決して否定的ではない。 なぜ、このような不思議なことが起こるのだろうか。もしかしたら、格差の是
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件は、日本社会に、テロと向き合う厳しさを改めて突きつけた。イスラム国は今後どうなっていくのか。日本はどのような姿勢を取るべきなのか。今月、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)を出版し、中東情勢や国際政治に詳しい東京大学の池内恵准教授(41)=イスラム政治思想=に聞いた。 --イスラム国の現状をどのように分析するか 「日本人人質事件で公開した映像が従来と比べて貧弱であるなど、これまでの様式と異なっている。イスラム国は、ヨルダン人のザルカウィ容疑者(2006年に米軍の空爆で死亡)が作った『イラクのアルカーイダ』が母体であり、今も中核となっている。拠点が攻撃されるなど、その集団の勢力が劣っているのではないか。他の組織から孤立化している可能性もある」 --ヨルダン政府の対応が注目されている 「そもそも『イラクのアルカーイダ』は、イラクとヨ
長期金利が0・2%台まで下がっている。これは過去最低の水準だ。金融緩和や消費増税見送りで金利が上昇するとみていた一部の市場関係者の予測は見事に外れている。 筆者のところにきた年賀状でも、「いつか金利が上がるので財政破綻が心配」と書いているものがしばしばある。そうした差出人をみると、財務省時代の知り合いばかりだ。 本コラムで再三指摘しているが、財務省は景気に関係なく増税指向である。財務省は公式には絶対に認めないが、その理由は増税による予算歳出権の拡大を目的としているからだ。そう考えた方がいろいろなことをうまく説明できるという意味で、「仮説」といってもいい。 財政破綻論者の主張をそのまま言えば、金融緩和すれば、「実質金利+予想インフレ率=名目金利」というフィッシャー関係式によって金利が上がるという。 しかし、現実には、フィッシャー関係式はデフレギャップ(供給が需要を上回る状態)のあるときには働
《人類絶滅のリスクを防ぐ貢献度を尺度とすると、青色LEDの貢献度は、過去の全ノーベル賞受賞者(487人)の発明・発見の総合計の貢献度と比べて、天文学的に大である。》 《中村教授(青色LEDの発明者・ノーベル物理学賞受賞)は、天才である。中村教授単独発明の青色LEDの輝度(明るさ。1000ミリカンデラ)は、1993年当時、赤崎勇教授(ノーベル物理学賞受賞)、天野浩教授(ノーベル物理学賞受賞)共同発明の青色LEDの輝度の100倍位(※編注 大文字)であった。》 中村教授をほめたたえる異色の内容だが、升永弁護士は夕刊フジの取材に対し、「意見広告は私がやると決めた。日本人は、誰も中村先生を天才だと思っていない。モーツァルトやバッハ、スポーツ選手のことは天才と呼んでも、学問の世界の人間を天才とはいわない。9歳でハーバード大を卒業した人は天才ではない。私の天才の定義は人類の歴史の中でどういう貢献をした
ノーベル物理学賞を受賞した中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)が特許法改正への反対をうたった朝日新聞の意見広告が話題になっている。広告の中で、中村教授が元勤務先を提訴し、巨額の発明対価を求めた訴訟で代理人を務めた升永(ますなが)英俊弁護士(72)が、「青色LEDの貢献度は、天文学的に大」「中村教授は天才」などと訴えているのだ。異色の意見広告の狙いとは-。 中村教授らの意見広告が掲載されたのは、東京本社発行の20日付朝日新聞8面。《発明を奨励する会》の名義で、中村教授と升永弁護士のそれぞれの文責による主張が掲載された。 中村教授は、特許法改正について反対の姿勢を強調。特許庁は先月、特許権を「社員のもの」とする現行の規定を「企業のもの」に変更し、企業に対しては社員への報奨を義務づけることを柱とする基本方針を提示したが、中村教授は《この特許法改正には、猛反対である! サラリー
衆院選は終盤を迎えた。なぜ今回解散したのか忘れている読者もいるだろうから、あらためて振り返っておこう。 今でこそ、2015年10月に予定されていた消費税の再増税は延期して当然と思われているが、解散前は実施が当たり前だった。消費増税に伴う利権を財務省に求めて、国会議員や地方議員、首長、マスコミ、経済界などは大半が賛成だった。それは、財務省が巧妙に仕組んだ「ご説明」の成果でもある。 野党も、今では再増税延期に反対するわけがないというが、それは後出しじゃんけんだ。解散前に民主党は増税賛成だったが、解散が決まると急に手のひら返しをした。 もし安倍晋三政権が衆院を解散しないまま消費増税の凍結法案を準備していたら、財務省が自民党の増税派や民主党に根回しし、政局になって政権は倒されたただろう。そうなれば、アベノミクスは終わり、増税路線となっていたはずだ。 今年4月の8%への消費増税は、民主党の野田佳彦政
先月29日の台湾の統一地方選で、与党の国民党が歴史的大敗を喫した。その責任を取り、馬英九総統は3日、兼務していた国民党の主席を辞任した。このことに中国は大きなショックを受けているだろう。 馬氏は中国の習近平国家主席との会談を目指すなど、中国に寄り過ぎていた。だが、台湾の人たちは香港の「雨傘革命」を目の当たりにして、「中国に近づいてもロクなことがないぞ」「いまの自由な選挙にタガがはめられる」と思うようになり、それが国民党の敗北につながった。 馬政権の求心力はさらに低下し、総統の任期はあと1年半あるが、完全に「レームダック(死に体化)」した。これまで進めてきた中国との関係強化政策も後退するだろう。たぶん、次の総統は最大野党の民進党から選出されることになり、中国とは距離を置くはずだ。場合によってはスコットランドよろしく独立を志向するかもしれない。 中国にとって、「香港の次期行政長官選挙で立候補を
「来年度予算と補正予算で歳出増を渋り、景気は良くならないので、自民党は来年春の統一地方選で負け、党内基盤も弱くなる。来年秋の自民党総裁選での再選は難しくなる」 逆に自民党が圧勝し、長期政権が視野に入った場合はどうか。約5年5カ月続いた小泉政権下で総務大臣補佐官を務めた高橋氏は当時を振り返りつつ語る。「予算編成で最初は財源がないと渋っても、最後には“埋蔵金”が出てきた。今回も埋蔵金に手を突っ込まれ、国債発行を増やさずに予算を組めるとなると、再増税もやりにくくなる。財務官僚にとっては最も嫌なことだろう」 財務官僚は選挙で選べないが、民意を反映させることは可能というわけだ。高橋氏はこう締めくくった。 「財務官僚は、政権がどのぐらい続くのか、よく見ており、長期政権になると思うと、面従腹背であっても従うものだ。政治家にとって議席数は最大の力となる」
今回の衆院選では、消費税の再増税延期を決断した安倍晋三首相と、増税を実現したい財務省の対立構造も浮き彫りになった。「最強官庁」と呼ばれる財務省に、安倍首相は国民に信を問う形で対抗したが、事前の世論調査どおりに自民党が圧勝し、長期政権が実現すれば、財務官僚をねじ伏せることも可能となるという。 「財務省のみなさんも、善意ではあるんですが、すごい勢いで根回しをしてますから、党内全体がその雰囲気になっていて…」 公示前の11月30日、安倍首相はフジテレビ「報道2001」に出演し、財務省の増税包囲網についてこう明かした。 続けて「責任を持っているのは私ですから、解散総選挙という手法で民意を問えば党内、与党も含めて、役所もみんなでその方向に向かってちゃんと進んでいく」と語気を強めた。 また、産経新聞によると、衆院解散前、安倍首相が消費税再増税の先送りに傾きつつあるとの情報を得た財務省は組織を挙げて説得
中国の国内総生産(GDP)減速や住宅価格の下落が続いている。香港のデモなどの問題を抱えるなか、今後も経済は減速を続けるのだろうか。 中国経済の長期的な動向を見るには、「ルイスの転換点」は避けられない。ノーベル賞経済学者アーサー・ルイスによると、経済発展の初期の段階にある国々は小さな近代的セクターと、大規模な農民を持つ大きな伝統的セクターからなっていて、この農民という「余剰労働力」が近代的セクターに移行し、経済発展する。 ところが、余剰の農民が無くなった。ここまでくると、人口要因での経済成長の限界になる。それを突き破るには、経済構造の変革など「余剰労働力」ではない別の要素が必要になるが、それがないと経済停滞するわけだ。中国がそれを越えたかどうかは、多くの議論があるが、そうともいえない状況だ。 仮に中国がルイスの転換点を越えたとしても、「1人あたりGDP1万ドルの壁」がある。中国の1人あたりG
新緑たけなわの米ワシントンで、ハドソン研究所が国際問題についての意見交換会を開催した。出席したのは、主として現職の政治家で、アジア問題についての討論では「日本がようやく本気になって安全保障問題に乗り出した」という好意的な評価が目立った。 「第2次大戦後、日本が初めて安全保障問題について積極的に国民の意見を変えようと動き始めている。オバマ政権は、軍事予算を大幅に切り詰めており、心強い」 中西部の保守系現職下院議員はこう言った。安倍晋三首相が提唱する集団的自衛権についても、ワシントンの政治家は積極的に受けとめている。 ワシントンのジャーナリストや専門家には集団的自衛権について「何のことかよく分からない」という冷たい見方もあるが、日本が初めて国の外の問題、世界の安全保障問題について真剣な論議を始めたことはワシントンで評判がよい。 もう一つ、この会議で取り上げられたのは「憲法の解釈を変えて軍事力を
住宅地の地価が6年ぶりに上昇したというニュースがあった。アベノミクスによる景気浮揚感が、不動産価格を上昇させているのだろう。 しかし、地価が継続的に上昇するには、何よりも景気が良くなって不動産に対する需要が増えなければならない。足元の景気を見ていると、どうも心許ない。今回の上昇は一時的なものだと考えるべきだ。 地価が下がる材料の方がいろいろある。第一に人口が減っているわけだから、住宅に対する需要は必然的に細る。にもかかわらず、住宅は余っている。現に地方や大都市郊外では、地価が継続的に下落している。 平成27(2015)年からは相続税が改正される。基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」だったのが「3000万円+600万円×法定相続人の数」になる。 これまでは不動産の評価額が1000万円で現金5000万円、法定相続人が3人だった場合、相続税はかからなかったのが、改正後は単純
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