作家樋口毅宏氏の小説『中野正彦の昭和九十二年』(イースト・プレス社)が、発売前日になって出版社によって自主回収された。異例の事態である。 発売前日の回収ということは、すでに書店には配本されているタイミングだ。販売中止の連絡がすぐには反映されなかったのだろう、アマゾンや一部の出版社ではプレスリリースの後でもしばらくは購入することができた。(現在では売り切れ扱いである) この小説を読むことができた人は他にもいる。もともとは『メルマ旬報』というウェブマガジン(2022年11月に閉鎖)で連載されていたからである。まさかその連載当時の読者は、このような事態になるとは全く想像していなかったのではないか。 この小説が回収されたのは、版元の「刊行にあたっての社内承認プロセスに不備」と短く説明されている。だが実際のところはどうなのだろうか。この出版中止/自主回収に至る、なんともいえない複雑で皮肉な事情をまと
性犯罪をめぐる発言や性的マイノリティーの人たちをめぐる差別的な表現が批判を受けた杉田水脈総務政務官は「内閣の一員として迷惑をかけたくない」として、政務官の辞表を松本総務大臣に提出しました。 杉田水脈総務政務官は、過去に月刊誌の論文で「LGBTの人たちは『生産性』がない」と記したほか、みずからのブログに国連の会議に参加した時のことについて「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」などと掲載し、先の国会で「配慮を欠いた表現だった」と謝罪し撤回しました。 さらに、杉田政務官の、性犯罪や女性差別、それに待機児童をめぐる発言などに対しても批判が相次ぎ、野党側は通常国会でも追及する姿勢を見せていました。 こうした中、杉田政務官は「内閣の一員として迷惑をかけたくない」として、政務官の辞表を松本総務大臣に提出しました。 松本大臣は記者団に対し「与党の一員であり、政治家であるということを総
『ワンダーウォール』は、京都にある大学の学生寮を舞台に、老朽化によって建て替えを望む大学と、それに反対する学生寮の住人たちを描いた作品だ。こう書くと単なる学生と大学の対立に見えるかもしれないが、むしろ同作では、正当な手段をとっても声がどこにも届かないむなしさを描いている。 主人公のキューピー(須藤蓮)は、高校生のときに100年以上の歴史を持つ京宮大学の学生寮「近衛寮」にひとめぼれのような感覚を持ち、学生たちが寮の自治をしているところにも惹かれて京宮大学を志望した。寮生たちは自分たちで考え、自分たちの合意のうえでその寮を運営していた。年齢問わず敬語は禁止、トイレはオールジェンダーなど寮独自のルールが形成され、だからこそ、寮の学生たちは好きなように暮らし、そこには自由があった。 近衛寮の存続をめぐる大学側と寮生の議論は約10年にわたって続いていたが、やがて変化が訪れる。新しい学生課の部長は勝手
2022年に炎上した企業関連の案件を振り返ります(写真左より性加害が報道された香川照之氏が登場していたトヨタイムズの紙面、右は社長のツイッターでの発言が波紋を呼んだ焼肉ライクの店舗外観) 2022年もそろそろ終わりだが、新型コロナの感染が収束の兆しを見せてきた一方、ロシアによるウクライナ侵攻、安倍元総理の殺害事件とその後の旧統一教会や国葬の問題、円安と物価高の進行など、波乱の多かった一年だった。 こうした出来事は、企業活動にも大きな影響を及ぼしているが、私の専門である広告・宣伝・PR関連においても、時代の変わり目を迎えていることを示唆するような出来事が多々あった。本稿では、「炎上案件」を中心に、時代の潮流を読み解きたい。 2022年に起きたのは、「炎上」というよりは「論争」 早速、広告・PR関係における2022年の「炎上案件」を振り返ってみよう。炎上に限らず、1年間のトラブルを一覧にしたの
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