23日死去した元ソニー社長の大賀典雄氏は、音楽家として世界有数のオーケストラを指揮するなど、異色の経営者だった。事業家としても、創業者の2人が「技術の井深大氏」「マーケティングの盛田昭夫氏」といわれたのに対し、「デザインの大賀典雄氏」と呼ばれ、「SONY」を世界的なブランドに飛躍させることに貢献した。 「心の琴線に触れることが重要だ」。表現力豊かな声楽家出身らしく、モノづくりでもこう説き、社長を退くまで製品デザインの責任者として、こだわりを持ち続けた。 「性能が優れているだけでなく、見た目にも美しく、それを持っていると気持ちがうれしくなるような製品」を世に送り出せば、おのずとブランドイメージも高まるという思想が、その背景にある。 早くから音楽や映像といったソフトの重要性を認識し、「ハード(機器)とソフトは車の両輪」を標榜(ひょうぼう)。ハードを売るにはソフトが必要で、ソフトが売れればハード