フルシチョフ政権期のソ連映画で、パッと花が咲いた感のある作品を5本ご紹介しましたが、逆にこの時期に間に合わなかったため(?)、20年間も塩漬けにされてきた映画を。アレクサンドル・アスコリドフ監督『コミッサール』(1967年)。 ロシア革命に次ぐ内戦時代、南ロシアのある町に赤軍が進駐する。女性コミッサール(政治委員)のクラウディア・ワビーロワは革命の闘士で強固な信念の持ち主だが、愛人の子を宿して出産日が迫っていた。幹部の間で相談した結果、彼女はこの町で鋳掛け屋を営むユダヤ人エフィムの一家の世話になり無事出産する。しかし敵の大部隊が迫って赤軍はその町から退却することになり、クラウディアは赤ん坊を連れて行くか預けて行くか、母親と政治委員との立場の間で苦悩する…。 この映画のどこが当時マズかったかというと、ソ連社会でタブーだった「ユダヤ人問題」を取り上げたからで、ソ連政府はかつてのロシア帝国を「民