text 情報自由論第12回 ネットワークに接続されない権利(後編) 著者:東浩紀 初出:『中央公論』2003年7月号、中央公論新社 「ゲイテッド・コミュニティ」の伸張 (前回の続き) ここで障害者の例を挙げたのは、今後だれもが直面するはずの普遍的な問題を浮かび上がらせるためである。連載の前半部分で強調したように、現代社会は、中心となる規範意識(大きな物語)が失われたため、新たな統合性を技術的な手段で確保する方向に動いている。ポストモダン論や社会学の成果は、その延長線上にある社会が、構成員ひとりひとりの信条や価値観には手を出さないかわりに、危険な人物をあらかじめ排除する「環境管理型社会」になるであろうことを教えてくれる。 そして、この変化は、公共空間の性質も大きく変えてしまう。二十世紀の公共空間はだれもがそこに入れる広場をモデルとしていたが、二十一世紀の公共空間は、入口にIDカードの読み取