text 情報自由論第14回 不安のインフレスパイラル(後編) 著者:東浩紀 初出:『中央公論』2003年10月号、中央公論新社 未来はユートピアなのか悪夢なのか。情報化の波がサイバースペースを飛び出し、あらゆる物理環境にコンピュータが埋め込まれ、消費者の利便性が飛躍的に上昇し、セキュリティも確保されるユビキタス社会において、人々は自由になるのか、それともより管理されやすくなるのか。この問いに対する筆者の答えは、それは両方とも並行して進む、というものである。私たちが足を踏み入れつつある「環境管理型社会」では、個人レベルの自由の拡大と社会レベルの管理の徹底は、対立するのではなく、分かちがたく結びついている。この両義性については、連載中で幾度も繰り返してきたので、もう説明する必要はあるまい。したがって、未来の情報社会を個人のエンパワーメントが進んだユートピアと捉えるか、悪夢的な管理社会と感じる