「パパ、行ってらー」 これが父親が最愛の娘と交わした最後の会話だった。 生徒たちの登校時間だった2021年2月12日午前7時50分。学校の昇降口に“ドーンッ!”という低く響く音が鳴り響いた。コンクリートの地面には体操着姿の小さな少女が仰向けに倒れていた。 山形県酒田市に住む当時中学1年生だった石澤準奈(せつな)さん(13)が通っていた酒田市立第一中学校の校舎4階から飛び降り、亡くなった。第一発見者は昇降口に入ろうとしていた準奈さんの同級生だった。倒れた準奈さんを見て「先生を呼んで!」と助けを呼び、校長と教頭が駆け付け、人工呼吸や心臓マッサージを施した。準奈さんは校舎の4階にあった教材室の窓から飛び降り、命を絶ったのだ。教材室の窓際には踏み台に使った椅子が残され、準奈さんが登校時に着ていた制服が丁寧に折りたたまれていた。彼女を絶望に追いやったものはなんだったのだろうか――。(全3回の1回目/