2.クロマグロ完全養殖に貢献する研究開発 (3)クロマグロの仔稚魚をいかに育てるか 1)仔稚魚飼育の工程 クロマグロ種苗生産機関では、以下のような工程で仔稚魚飼育が行われています。 a.受精卵の消毒 生簀から採集された受精卵は、卵が通り抜ける目合いの網を使って、卵よりも大きいゴミ、プランクトン、他の魚の稚魚などを取り除きます。卵の表面には、仔稚魚飼育段階で疾病を引き起こす可能性があるウイルス性神経壊死症の原因ウイルスや有害細菌が付着している可能性があるほか、仔魚に有害な肉食性のプランクトンなども混入する可能性があります。これらを消毒、除去するため、濃度0.5ppmのオキシダント海水で、受精卵を1分間消毒した後に、オキシダント除去海水で洗浄し、ふ化水槽(図21)へ収容しふ化を待ちます。 b.仔稚魚の飼育環境 ふ化水槽に収容後、1日くらいでふ化が始まります。ふ化が完了したら、ふ化仔魚(コラム8
小型化が進行しているカツオの話題です。「去年も記録的な不漁だったが、今年はそれよりも悪い…」ということで、一本釣りの漁業者は危機感を強めています。例によって、産経新聞の中国批判が飛び出しました。 カツオ一本釣りピンチ 中国巻き網漁船が根こそぎ、中大型魚が激減 2010.7.17 20:52 日本の食文化を支えるカツオの一本釣りが危機にさらされている。中国の巻き網漁船が、黒潮に乗って日本近海に北上する前にインドネシア沖の太平洋中西部で、「ツナ缶」用に稚魚や小型カツオを根こそぎ乱獲。一本釣りで捕獲し、かつお節やカツオのたたきに使われる中大型魚が激減しているためだ。中国が年内に、1千トン超の最新鋭船を新たに12隻導入することも判明。漁業関係者の間では、早急な漁獲規制を求める声が強まっている。 「中国の巻き網漁船の乱獲がこれ以上進むと、日本近海ではカツオが取れなくなる」 で、中国はどれだけ獲ってい
「海からの贈り物、大切に消費者へ」――。銚子の漁港のセリ場に貼ってある横断幕。3月14日、3月に入って初めてサバのまとまった水揚げがありました。数量約5,000トンの大漁です。2月26日に約500トン水揚げされて以来約2週間ぶりの水揚げでした。2月の水揚げのデータがキロ50円前後と非常に安い浜値(水揚げ地で取引される値段)であったことから、食用に向かない赤ちゃんサバが主体ということは容易に想像がついてしまいます。 写真は3月14日に水揚げされた130g未満のサバですが、どれもこれもそろったように同じような200gに満たない大きさでした。実質的に食用の水揚げではないのでセリ場も活気無し。これらの大量に水揚げされたサバは、一般の売り場に並ぶことはなく、ハマチやマグロ等の養殖用の餌用主体として凍結されます。 水揚げされる小型のサバは、消費者ではなく養殖の餌用に主に冷凍されます。水揚げされていたサ
産卵期のクロマグロを巻き網で一網打尽にしている鳥取県境港。漁獲量激減の主原因とみられているが、野放し状態が続く 水産庁は昨年12月、クロマグロの危機的状況を物語るショッキングな結果を発表した。それによると、クロマグロの資源量がここ数年で激減しているのだという。ワシントン条約の規制対象になるともいわれ、マグロが食べられなくなる日も近い!? ◆なんと前年比80%減!! 過去最低の漁獲量の理由とは? 「水産総合研究センター」の調査によると、太平洋クロマグロの産卵場は、南西諸島(沖縄県)周辺と日本海に限られているが、南西諸島周辺で生まれたクロマグロの漁獲量を解析した結果、’14年生まれのクロマグロ資源量は前年比で20%(80%減)、一昨年と比べても33%(67%減)に激減していることが判明した。 一方の日本海でも一昨年の23%(77%減)に漁獲量が落ち込み、「データを総合すると、過去最低を記
三重大学准教授 勝川 俊雄 今年11月に国際自然保護連合がレッドリストを改訂し、新たに日本近海に生息する太平洋クロマグロを絶滅危惧種に指定しました。レッドリストは関係諸国に保全の必要性を示すのが目的であり、指定されたからといって、ただちに強制的な規制がかかるわけではありませんが、関係諸国が連携して、保全措置を執ることが強くもとめられています。また、クロマグロの大半を消費する日本には、世界から厳しい目が向けられています。 1950年代には、4万トンあった漁獲量は、現在は1万5千トンまで落ち込んでいます。国別に見ると、最も漁獲が多いのが日本で、その次にメキシコです。台湾、韓国、アメリカ合衆国も漁獲をしているのですが、その量は微々たるものです。クロマグロ漁業には、未成魚中心の漁獲、産卵場での集中漁獲、規制の欠如という、解決すべき3つの問題点があります。 まずは未成魚中心の漁獲についてです。
2014年11月17日に、国際自然保護連合がレッドリストを改訂して、新たに太平洋クロマグロ、アメリカウナギ、カラスフグ を絶滅危惧種として指定しました。レッドリストは関係諸国に保全の必要性を示すのが目的であり、掲載されたからといって、ただちに強制的な規制がかかるわけではありません。関係諸国が連携して、保全措置を執ることが強くもとめられています。IUCNのプレスリリースでは、アジアの食品需要がこれらの魚種の減少を引き起こしたと指摘しています。これらの魚種の大半を消費する日本には、世界から厳しい目が向けられています。 1950年代には、4万トンあったクロマグロの漁獲量は、現在は1万5千トンまで落ち込んでいます。国別に見ると、最も漁獲が多いのが日本で、その次にメキシコです。台湾、韓国、アメリカ合衆国も漁獲をしているのですが、その量は比較的少ないです。日本が「韓国のせいでクロマグロが減った」と主張
本コラム「日本の水産業は崖っぷち」の開始から2年半が経過しました。この間にも水産資源は減少し続け、今年の6月にはウナギが、そして11月17日には太平洋クロマグロが、国際資源保護連合(IUCN)により、絶滅危惧種(「レッドリスト」)に指定されました。「崖っぷち」の資源予備軍は、まだまだあります。 皮肉にも、日本が漁業の主体である太平洋クロマグロの親魚資源量は、歴史的低位置付近という深刻な減少を続ける一方で、大西洋クロマグロは資源が増加中。同じマグロなのに、なぜでしょうか。太平洋と大西洋で何か違うことが起こっているのか、というとそうではありません。これは環境の変化の問題ではなく、「人災」と言える結果です。魚を一網打尽にする大型巻き網船が問題かと言えば、それも違います。ノルウェーをはじめとする北欧では巨大な巻き網船の建造が進んでいます。それなのに水産資源は安定し、地方の水産都市は栄え(写真)、漁
平成26年9月16日(火曜日)から17日(水曜日)まで、東京都内において、「ウナギの国際的資源保護・管理に係る第7回非公式協議」が開催され、日本、中国、韓国及びチャイニーズ・タイペイの4者間で、ウナギ資源の管理の枠組み設立及び養鰻生産量の制限等を内容とした共同声明を発出しました。 日本、中国、韓国及びチャイニーズ・タイペイの4者間で、以下を内容とする共同声明を発出することで一致しました。 (1)各国・地域はニホンウナギの池入れ量を直近の数量から20%削減し、異種ウナギについては近年(直近3カ年)の水準より増やさないための全ての可能な措置をとる。 (2)各国・地域は保存管理措置の効果的な実施を確保するため、各1つの養鰻管理団体を設立する。それぞれの養鰻管理団体が集まり、国際的な養鰻管理組織を設立する。 (3)各国・地域は、法的拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討する。 http://
絶滅が心配されるニホンウナギの資源管理を目指す日本、中国、韓国、台湾による会合が17日、東京都内で開かれ、養殖に使う稚魚(シラスウナギ)の量を前季の数量から20%削減することで合意した。水産庁が発表した。養殖による生産量を制限することで、実質的に稚魚の乱獲を防ぐ。ニホンウナギの資源管理に関する国際的な枠組みができるのは初めて。 ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)が6月に絶滅危惧種に指定。7割を消費する日本が中心となり、東アジア全体で資源管理に取り組むことを国際社会に示し、国際的な取引を禁じるワシントン条約への指定を防ぐ狙いもある。 会合では、ニホンウナギ以外のウナギについても、養殖に使う量を「近年(直近3年)の水準より増やさない」ことで合意した。4カ国・地域の養殖業者らで国際的な組織をつくり、資源管理を進めていくことも決まった。
先ほど終了したWCPFC北小委員会に関する情報を整理しました。 クロマグロ資源の概要 漁獲が無かった時代の4%という危機的な低水準→回復措置を獲る必要がある。 科学委員の資源評価レポートの概要 http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/Stock_assessment/PBF_2014_Exec_Summary_4-28-2014_gtd.pdf その和訳 http://katukawa.com/?p=5746 漁業の概要 未成魚・成魚ともに日本が漁獲の大半をしめる。次いで、メキシコと韓国の未成魚の漁獲が多い。乱獲行為が継続し、資源は乱獲状態に陥っている。 乱獲行為 → 非持続的な漁獲圧をかけている → 漁獲圧削減が必要 乱獲状態 → 非持続的な漁獲で、資源がすでに減少している → 資源回復が必要 クロマグロ漁業の3つの問題点 ① 卵を産む前に95%以上の個体をとってし
クロマグロの漁獲は、次の3つの問題点があることを先の記事で書いた。 ① 卵を産む前に95%以上の個体をとってしまう ② 産卵場で待ち伏せして、卵を産みに来た親を一網打尽 ③ 非持続的な漁業を規制するルールが存在しない 9月1日から4日まで、福岡でクロマグロの資源管理について議論をするための国際会議が開かれている(現在、その会議を傍聴しながら、ブログを書いている)。ここで日本代表が提案したクロマグロの規制について検討してみよう。 日本の提案はここにある。 http://www.wcpfc.int/node/19348 日本提案の概要 Management measures 2. CCMs shall take measures necessary to ensure that: (1) Total fishing effort by their vessel fishing for Paci
現在、国内外で関心が高まっている太平洋クロマグロの現状について整理してみよう。 このエントリで用いる図はすべて、WCPFCのISCレポートからの引用である。 http://isc.ac.affrc.go.jp/pdf/2014_Intercessional/Annex4_Pacific%20Bluefin%20Assmt%20Report%202014-%20June1-Final-Posting.pdf 日本が主人公 太平洋クロマグロは、長距離の回遊をする高度回遊性魚類の代表である。しかし、その産卵場および主な生息域は日本のEEZにあり、漁獲および消費の大半は日本人によるものである。「ほぼ日本の水産資源」といってもよいだろう。 日本の次に漁獲が多いのはメキシコ。東太平洋に餌を求めて回遊した10~20kgぐらいの未成魚を捕まえて、餌を与えて太らせて、日本に出荷している。それ以外の国、韓国、
水産庁は26日、高級魚で知られる太平洋クロマグロについて来年1月からの漁獲枠を半分にすると発表した。日本沿岸で地域別に漁獲上限を設ける。乱獲により太平洋クロマグロの親魚の資源量は過去最低水準に近づいており、きめ細かい管理で回復をめざす。クロマグロの価格が高止まりする一因になりそうだ。26日開いた「資源・養殖管理に関する全国会議」で、幼魚の漁獲上限を年4007トンと2002~04年の平均値(80
逆水門完全閉鎖による影響 逆水門の閉鎖、霞ヶ浦の淡水化によって産業・生活用水の確保はされましたが、同時に多くの弊害が生まれました。 1.漁獲量の減少 霞ヶ浦・北浦はウナギの産地として有名でしたが、逆水門の閉鎖後4年目から漁獲量が激減しました。 ウナギの稚魚(シラスウナギ)やスズキなどの多くの魚は、上げ潮に乗って海から湖に上がってきます。これらの魚は塩水くさびと呼ばれる上げ潮の先端と一緒に川の中央部を遡上してきますが、逆水門が閉鎖され遡上が不可能になってしまったため、霞ヶ浦における漁業は大きな打撃を受けています。また、逆水門の完全閉鎖によって汽水域が失われたため、汽水域に多く生息するヤマトシジミやマハゼなども減少しています。 2.水質悪化と水生植物の減少 逆水門を閉鎖することで水の動きが少なくなり、湖にヘドロが大量に堆積するため水質にも悪影響を与えています。水質悪化対策としてしゅんせつが行わ
先日、水産庁の資源管理あり方検討会が開かれた。この手の検討会が開かれるのは実に6年ぶりである。6年前の検討会は、資源管理反対派を集めて、資源管理をしない言い訳を並べただけだった。今回も、俺以外はこれまでと同じメンバー。水産庁OBが大勢をしめる委員たちは、「日本の漁業管理はすばらしい」と自画自賛しているだけ。今年の3月から6月まで、密度が低い会議をたった6回しただけで、国の漁業政策の方針を決めようというのだから、乱暴な話である。 水産庁にとって、この手の会議は、財務省と政治家に予算をねだるための儀式である。議論の内容ではなく、会議をやったという既成事実が重要なのだ。会議の着地点(とりまとめ)は、あらかじめ決められている出来レースだ。その証拠に、俺以外の委員は、「日本の漁業は現状でうまくいっている」と言い張って、個別漁獲枠方式(IQ方式)の問題点を並べて反対していたのだけど、会議のとりまとめは
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