環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を聞いて、「まとまらなかったときのリスクを回避できた」との思いが強い。各国の利害が対立したまま暗礁に乗り上げれば、貿易ルールは「現状変更勢力」である中国の主導によって、恣意(しい)的で腕力がすべての過酷な世界に陥る可能性があった。 環太平洋の国々をTPPに結束させたのは、当の中国であることの皮肉に留意すべきだろう。1989年に「貿易自由化」を掲げてアジア太平洋経済協力会議(APEC)が創設され、その後の新貿易交渉ドーハ・ラウンドは知的所有権の厳格化を拒絶する中国が障害になった。 TPPは大国の抵抗に嫌気した小国が先導する形で、米国、ついで日本、カナダが加わった。そして交渉は何度も漂流する。 交渉が座礁してしまえば、「世界の貿易ルールは巨大市場がつくる」との定理に従って、中国が自国の不透明なルールを拡大しかねない。彼らがやがて米国を抜いて世界1位
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