地経学ブリーフィングでは、過去3回にわたって、ロシアのウクライナ侵攻は「新しい戦争」という側面があったのかについて、論じてきた。 8月29日の齊藤論文(「戦場と民間の接近」ウクライナ侵攻が示した側面)では民間企業や一般市民が戦場に参加している点に着目し、9月5日の佐藤論文(ロシア・ウクライナ戦争が世界に刻みつけた教訓)では認知戦、法律戦、そして「ストック」と「フロー」の戦いという点で新たな教訓が得られる戦争だと明らかにした。9月12日の小泉論文(ウクライナ戦争が古典的な戦いになった3つの訳)では新しい点はありながらも古くさい戦争である点に特徴があることを示した。 本稿では、対ロ制裁に焦点を当て、経済制裁が戦争にもたらす影響を検討してみたい。 抑止力にならなかった経済制裁 ロシアがウクライナ国境に兵力を集め、侵攻が今にも始まるという段階で、アメリカは早々にウクライナへの派兵を否定し、武力によ