8月10日小阪修平氏が亡くなられたそうだ。新聞を取っていないので、うかつにも最近まで気づかなかったのである。縁あって氏の謦咳に接したことのある者として、まことに残念である。 私が小阪氏に最初にお会いしたのは、1968年の春である。その年大学に入学すると同時に、民間のキリスト教系の学生寮に入った私の隣室が、たまたま氏の部屋だったのである。当時彼は、劇団駒場に属し、八面六臂の活躍をしておられたと思う。寮を留守にしている事が多かったが、少し話をしただけでも、氏の教養の広さと発想の豊かさに魅せられたものである。それが華麗なレトリックをまとって、次々に万華鏡のように氏の口からあふれてくるのである。もちろん、このような年代での二年三年の差は大きいものであるが、彼の場合はそれだけではなかった。彼が自由な精神で、既に独自な精神世界を持っていたこと、すべての知識をそのもとに掌握しつつ前進していた事が、とりわ