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ブックマーク / note.kishidanami.com (11)

  • 家を出るダウン症の弟にはなむけをしたら、えらいことになった(総集編)|岸田奈美|NamiKishida

    キナリ★マガジンで5ヶ月間、10万文字にわたって連載してきた「姉のはなむけ日記」を、9000文字にギュッとして書いた総集編です。全文、無料で読めます。 ゾッとした。 この二年間で、ばあちゃんは認知症になって施設で暮らしはじめ、車いすに乗っている母は心内膜炎で死にかけ、わたしは会社をやめて作家業についた。 ダウン症で4歳下の弟だけは、実家で暮らし、福祉作業所へ通って手仕事をし、マイペースを貫いていた。 ふと立ち止まって、ゾッとしたのは。 この先、わたしや母の身になにかあれば、弟がひとりぼっちになるということ。 わたしですら、ばあちゃんの介護がはじまったとき、役所で福祉の手続きをしたらあまりに面倒でややこしく、泡吹いて倒れそうになったのだ。 障害があってうまく話せない弟は、ちゃんと頼れるんだろうか。 いざというときに頼れる先は、多いほうがいい。弟は26歳。いい人間関係ををつくるには時間がいるの

    家を出るダウン症の弟にはなむけをしたら、えらいことになった(総集編)|岸田奈美|NamiKishida
    uxoru
    uxoru 2022/09/11
  • きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)|岸田奈美|NamiKishida

    送迎車のためならエンヤコラと大分県別府市の車屋さんまで行ったら、なんと、ほぼ新車のセレナと出会えたのだった! 車屋の馬〆さんから、くわしい仕様や納期の説明を受けていると。 電話が鳴った。 グループホームの責任者、中谷のとっつぁんからだ。ちょうどよかった。セレナを入手できたって言おう。喜ぶぞォ。 「もしもし、お姉さんですか」 「はーい!ちょっと聞いてくださいよ、中谷さん。ありましたよ!車!セレナ!ほぼ新車!7人乗り!」 「えっ、はっ……ええ……!?」 興奮のあまりたたみかけてしまった。しかし、中谷のとっつぁんの反応が予想と違う。ここは「ええっ!?」ではないのか。 いやな予感がした。 「あの、それはもう、当に、ありがとうございます……そんないい車を……」 「どうしました?」 「ええ、あのですね、お姉さんのお耳に入れておきたいことが」 基的にわたしのお耳には普段、右から左に抜けていくザルの役

    きみが家族じゃなかったらよかった(姉のはなむけ日記/第8話)|岸田奈美|NamiKishida
    uxoru
    uxoru 2022/05/28
    庭で美味そうなBBQしてたら、私も肉ジーッと見てしまう自信ある👀
  • もしもし人類、身内のクソリプ|岸田奈美|NamiKishida

    いつにも増して長いnoteですが、前半はわたしの弟の話で、後半は誹謗中傷の話です。後半のはわたしの思考力と言語化力が拙いために闘争に発展するかもしれないので、卑怯だと思いつつ、マガジン読者のみなさまへのここだけの話としてください。 こんな日が来ないことを、心のどこかで祈っていた。 弟が、Twitterの存在に気づいてしまった。 「あのォー。なみちゃん、これ、どうかなあ」 弟が、頭をぽりぽりかきながら、自分のiPhoneの画面を見せてくる。 わたしは賢いのでわかるが、これは芝居だ。「頭ぽりぽり」と「どうかなあ」は、賢い僕は悩んでるんだけどね、というポーズにすぎない。 大抵そういう時、彼の決意は固まっている。 「どれどれ」 見せられたのは、Twitterであった。 「オ、オゲェェェェーッ!!!!」 今春で一番、汚い声が出た。春はおたけび。やうやう白くなりゆく顔色。 なぜ。 なぜTwitter

    もしもし人類、身内のクソリプ|岸田奈美|NamiKishida
  • 弥生の岸田奈美〜唐突にはじまる大切なファンクラブ〜|岸田奈美|NamiKishida

    1.はじめにもう、いろいろある。当に。大変なことが。国際情勢とかね。ここまでデッカイことが起きたら、さすがに思うことも悲しむこともあるから、なんか書いた方がいいかなあって、思うんやけども。 世界でどんなにデカいことが起きてたとしても、今日も目の前にあるちっちゃいことに対峙せねば、生きていけない人もおるやないですか。世界中が大変ななかで、口に出すのもはばかれるような、それでも切実な、ちっちゃいことと。 わたしがそうだから、いつも通り、ちっちゃくて、せせこましくて、どうしようもないことをね、ガツンと書いていこうと思いますわよ。 2.ファンクラブができました唐突すぎて、ごめんなさい。 岸田奈美の公式ファンクラブ「岸田団」ができました。 教団ではないです。団です。布団をかぶりながら円になり団子をらってる団体のイメージです。 いきなりどないした? noteの有料定期購読は? 出身大学と高校は?

    弥生の岸田奈美〜唐突にはじまる大切なファンクラブ〜|岸田奈美|NamiKishida
    uxoru
    uxoru 2022/03/01
  • グッバイ、祖母の運命の家はウチじゃない(後編)|岸田奈美|NamiKishida

    2022年1月末。 うちに何年も出入りしてくれていた唯一の介護ヘルパーさんと、一大抗争が起きた。 というか、まあ、積み重なったあまりのありえん数々に、わたしが怒った。向こうも怒った。ドンパチになった。双方、鉄砲玉のみの出演。 この介護ヘルパーさんから言われ続けたことで、ずーっと、誰より傷ついていたのは母だったけど、母は 「でも、何年もうちの介助をやってくれたし、わたしが我慢すれば、丸く収まるし……」 と言った。まただ。また、これだ。 ばあちゃんには施設に入居してもらおう、とこれまで何度か話はあった。だけどその度に、母は言うのだ。自分が我慢すればいいと。 張り詰めていたわたしの涙腺が、パーンッと弾けた。 「もういやや、わたしはつらい」 一度も言ったことのない言葉が、とめどなくあふれた。 「もう、実家に帰ってくるのがつらい。おばあちゃんからひどいことされるのも、介護ヘルパーさんからひどいこと言

    グッバイ、祖母の運命の家はウチじゃない(後編)|岸田奈美|NamiKishida
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    uxoru 2022/02/27
  • 弟が大金を稼いだので、なにに使うかと思ったら|岸田奈美|NamiKishida

    岸田家の歴史を揺るがす大事件が起きた。 わが弟が、莫大なお金を稼いだのである。 大金とは、彼が三十年働いて手にするはずの金額だ。 それを数時間で。 田舎の片隅にある剥がれたフローリングの我が家から、絶世の富豪が爆誕した。血統書のない梅吉(犬)も、高貴なチャウチャウに見えてくる。 弟は生まれつきダウン症なので、障害のある人が集まる福祉作業所で、平日の朝から夕方まで働いており、日給は500円だけど昼が450円なので、手取りは50円だということは、一旦、横に置いておく。 富豪が爆誕したのだ。 (※賃金は弟の障害の程度、作業所が受注できる業務の量、通っている人数などの兼ね合いがあり、弟も働くというよりは、みんなで喋ったり、散歩したりすることをなによりの目的にして通ってるので、ゆるく受け入れてくださる福祉作業所のみなさまにとても感謝しています) さて、その気になる稼ぎ方であるが。 手書きカレンダー

    弟が大金を稼いだので、なにに使うかと思ったら|岸田奈美|NamiKishida
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    uxoru 2021/10/20
  • 伊丹空港へ飛ぶはずが|岸田奈美|NamiKishida

    仕事で札幌へ行く用事ができたので、いま空港にいる。 京都からだと、伊丹空港までリムジンバスで一時間。関西空港までだと十五分ほど遠くなるし運賃も倍になるけど、こっちの方が航空チケットが安かったので、関西空港を選んだ。 空港までのリムジンバス乗り場は、京都駅の八条口にある。 八条口といっても、タクシーのロータリーから遠い位置にあるので、市街からタクシーで行く人は「八条口まで」じゃなくて「アバンティ前まで」って伝えた方がおすすめ!わたしみたいに時間ギリギリになって、息を切らして駆け抜けた道を振り返りたくなければな! 空港までの道のりをゆっくり歩けた記憶がないので、いつもどっかでキャリーバッグを死体のように引きずって走っている。心斎橋筋商店街の店先でチェーンに繋がれて投げ売りされてる安いやつだと一瞬でコロコロがお陀仏になったし、なにより空の状態でも重いので、わたしの持ち物のなかでもキャリーケースは

    伊丹空港へ飛ぶはずが|岸田奈美|NamiKishida
  • ビジネスホテルの旦那は、旦那より旦那|岸田奈美|NamiKishida

    最初に言っておくが、下世話である。 これは下世の話である。 大切な仕事があるので、三泊四日で東京のビジネスホテルに泊まった。 最終日のテレビ朝日の配信出演にあわせ、場所は六木を選んだ。 21時30分くらいにホテルに着き、慣れないアレやらコレやらで、へっとへとのへとになった体をシングルベッドに沈ませたところだった。 「あんっ……!」 あまりの体の重さにベッドフレームが喘いだかと思ったが、喘いだのは確かに女性だ。 ぴと、と左右の壁に耳をつける。なにも聞こえない。 ドアに耳をつける。 ここだけどうにも、耳に伝わる音の感じが違う。 「あっ、あんっ」 聞こえた。 向かい側の部屋だ。 ゼルダの伝説ならばここに爆弾を置くと隠された道が開くのだが、悲しいかな伝説ではなくこれは実話。ゼルダの実話。 TUBEの歌はどこで聞いても最高の夏だが、喘ぎ声はいつどこで誰と聞くかによって最高にも最低にもなる。 これが

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    uxoru
    uxoru 2021/07/27
  • ワクチンを打ったわたし、心臓を止めない薬|岸田奈美|NamiKishida

    お下がりの洗濯機をいつ持っていけばいいかという連絡を母にしたら、いま病院のレントゲン検査にきているとのことだった。 心臓に人工弁を入れている母は、“念のため”の検査がやたらと多い。いつも飄々とした外科医の先生が「うん、今日も異常なっしーん」と壁に貼りつけた検査の書類を見ながら、もう当り前に決まってたことかのごとく言ってくれるのだが、超弩級な心配性の母は、いつもあれこれと質問をする。 その質問が、なんか、天王寺動物園のトラの背中にマウンテンゴリラが乗って檻から逃げ出した想定の避難訓練というか、とにかく「そうはならんやろ」と言いたくなるような想像の産物なので、母はだいたい「そうはならんのですよ」と先生に笑われて、すごすごと診察室をあとにすると言う。 「もう病気はいやや、ピンピンコロリがいい」 母が電話で、さめざめと泣いた。 「すでに病気で二回死にかけとるから、あなたの場合はピンコロ ピンコロ

    ワクチンを打ったわたし、心臓を止めない薬|岸田奈美|NamiKishida
  • 全財産を使って外車買ったら、えらいことになった|岸田奈美|NamiKishida

    12月19日 追記 こちらの記事が、とんでもねえ経緯と熱量で、英語ほか10言語に翻訳されました! 英語翻訳された奇跡の舞台裏note 英語翻訳版の記事 全財産の内訳は、大学生の時からベンチャー企業で10年間働いて、したたり落ちるスズメの涙を貯め込んだお金と。 こんなもん、もう一生書けへんわと思うくらいの熱量を打ち込んで書いたの印税だ。 それらが一瞬にして、なくなった。 外車を買ったからだ。 運転免許もないのに。 「調子乗ってんなよお前」と思った人も、「どうせ“わたしのマネをすれば秒速で車が買えるんですよ”ってやばいビジネスに誘うんだろ」と思った人も、一旦、聞いてほしい。 わたしは、わたしなりに、誇らしい使い方をしたのだ。 あまりにも誇らしいので、一連の流れを12月6日放送の「サンデーステーション(テレビ朝日)」で取材してもらうことになったけど、時間が限られているTVでは、わたしの当の思

    全財産を使って外車買ったら、えらいことになった|岸田奈美|NamiKishida
    uxoru
    uxoru 2020/12/03
    本買うわ…(泣いた
  • 24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)|岸田奈美|NamiKishida

    わたしの弟・岸田良太には、生まれつき知的障害がある。ダウン症だ。(詳しくは「弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった」に書いた) 言葉がうまく伝わらない、発音もわかりづらい、みんなと同じことができない、いつもぼーっとしている。 でも、だめなところばかりじゃない。 玄関にを脱ぎ散らかし、母からいつも「あんたはムカデか」とお叱りを受けるわたしに比べ、よっぽど弟の方がきれい好きで、しっかりしてる。 難しい言葉はわからんが「ありがとう」「こんにちは」だけはハッキリ言えるので、すれ違う近所の人たちに挨拶と愛想を振りまきまくる弟は、愛されている。 先日もこのわたしを差し置き、内緒でからあげクンをオマケしてもらっていた。 わたしと弟で同じふるまいをしても、わたしは「アホ」で片づけられ、弟は「お調子者」と呼ばれる。後者がちょっと得をしている気がする。 かれこれ24年間、弟はずっとそんな感じで、楽しそ

    24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)|岸田奈美|NamiKishida
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