──中町さんは、歴史研究がご専門ですが、なぜアラブのポピュラー音楽の本を書いたのでしょうか? 中町氏:おっしゃる通り、僕の専門は中世アラブの文化史、つまり古い歴史です。2000年から2002年にかけてエジプトのカイロに留学していたのですが、現地で生活しているあいだはなるべく現代の文化に触れようと決めていたんです。そこで同時代のポップスに注目し、ついでに歌詞を通じてアラビア語の勉強もしようと思いました。当時、自分のホームページを作ってヒット曲や面白いビデオクリップを日本語で発信していました。 ──それは楽しそうですね。 中町氏:実際楽しくて、留学が終わってからも定点観測は続けました。そうすると、いわゆるメッセージソングのあり方がムバラク政権末期から2011年のエジプト革命にかけて大きく変化していることがわかってきたんです。これは実に興味深い動きだと思い、その変遷を1冊の本にまとめた次第です。