今回は安部公房『壁』(新潮文庫)を取り上げます。 安部公房については、以前教科書などにおいて何回か読んだことがあります。 しかし、その当時にはなかなか難しく、じゅうぶんに理解することができませんでした。 その後読書経験を積み、たとえばフランツ・カフカなどによる「不条理文学」に対しても それなりに面白さを感じることができるようになったため、今回再チャレンジしてみます。 本作は第25回芥川龍之介賞受賞作「壁 ――S・カルマ氏の犯罪」を含む初期作品で、 安部公房が持つエッセンスを感じるには最適でしょう。ぜひ読んでみようと思います。 本作は全3部構成を取っております。どれも独特な世界観が発揮されており面白く感じられます。 中でも個人的に気に入った「第三部 赤い繭」をメインに、ここでは紹介してゆきたいと思います。 同作はさらに「赤い繭」「洪水」「魔法のチョーク」「事業」という掌篇的な4作品に分かれて