アニメに映画化までされ、大ブームを巻き起こした『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)。幼い頃からミッションスクールに通い、17歳の頃からイタリアに渡って美術史や油絵を学びながら生活していた作者のヤマザキマリは、イタリアと日本、どちらの影響も同じくらい強く受けているからこそ、こんなふうに普通の日本人では描けない作品を次々と手がけてきた。 そんな彼女の新作『ジャコモ・フォスカリ』(集英社クリエイティブ)は、またしてもイタリア人の男性が主人公だ。しかし、『テルマエ・ロマエ』とは打って変わってギャグ要素はほとんどない。1960年代の日本を舞台にしたというこの作品では、ヤマザキマリが尊敬する三島由紀夫や安部公房を彷彿させる人物たちが登場して物語を彩る。まるで文学作品のような雰囲気を醸し出すこの作品だが、なんとうっすらBL風味なのだ。 主人公のジャコモ・フォスカリは大学で西洋史を教えるため、日本を訪