地裁のIT調停委員が、IT開発に係わる紛争の回避や早期解決のポイントを書いていきます。前回は、IT紛争が、大体どのような様相のものであるかをお話しました。紛争なのですから、当たり前と言えば、当たり前なのですが、ITと言うデジタルな世界の話にしては、随分と泥臭く、しかも曖昧な世界だと感じた読者の方も多かったでしょう。実際、私もこの業界に20年以上いますが、如何に技術が進歩して、開発が自動化しても、結局最後は、人間のやることだな、と感じることが多々あります。紛争の元は、結局、「言った言わない」、「認識のずれや誤解」など、実に人間らしいものであることが殆どです。 さて、今回からは、このブログの本筋である「IT紛争を防ぐポイントと紛争になったときに訴求すべきこと」について順次、お話していきたいと思います。事実上の初回である今回は、おそらくIT紛争でもっとも大きな話題になる「システムの要件定義」に