最近、英語圏において物理化学系の学術誌に発表されたあるエッセイを起点として、こんな専門誌を舞台に意外な、と思うほどの盛り上がりを見せた論争が起きた。それは、「キャンセルカルチャー」を巡るものなのだが、日本語圏ではこの論争についてほとんど紹介されていないようなので、今回の記事で簡単に紹介してみたい。 アンナ・クリロフ (Anna I. Krylov) が2021 年にアメリカ化学会が発行する物理化学の学術誌 The Journal of Physical Chemistry Letters に発表したエッセイ「科学を政治化することの危険 The Peril of Politicizing Science」*1は、左派的なイデオロギーが今日の科学界において検閲として働いていると指摘し、大きな評判を呼んだ。これに対して、同年フィリップ・ボール(Philip Ball)は、同誌において「科学はそも
![科学における「キャンセルカルチャー」論争 - わが忘れなば](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/33a2e856be599728abe13b7f142e4d0d55f8aaf6/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51wA0Iv-9wL._SL500_.jpg)