「人より速く走ることが、なぜ『すごい』のだろう? その根拠が実感できない」 「勝つのはいいことで負けるのはダメ、という一つの価値観の中にいながら、いつも自分がそこからズレている気がしていました」 競争が苦手な文学青年のセリフではない。なんとオリンピックに3大会も出場した為末大さんの口から出た言葉である。為末さんは400mハードルで世界選手権銅メダルを獲るなど活躍したあと、2012年6月に引退。“走る哲学者”とも称される。 このほど、為末さんと、禅僧・南直哉さんの対談本『禅とハードル』が刊行された(サンガ刊)。為末さんは4~5年前から南さんのほとんどの著書を読んでいて、今回、青森県・恐山に南さんを訪ね、10時間もの対談が実現した。その刊行記念対談(2月19日、紀伊国屋ホール)で出たのが冒頭の言である。 為末さんと話した印象を、南さんはこう語る。「この人がよくスポーツをやってたな、と思いました
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