村上f春樹に関するyoneyaccoのブックマーク (31)

  • ケータイ小説『闇夜(やみよる)』44話 - 村上F春樹

    「移動だ、移動がはじまったのだ」と男はポケットを落ち葉でいっぱいにしながら歩道橋の下を絶え間なく走る長距離トラックに向かって呟いた。福島県と山形県をつないだ新国道13号を移動する大きな車体が男の濁った目には、アフリカのサバンナを駆けるヌーの群れに映る。 いま、男は大自然を生きる動物の生態を調査する動物学者だった。トラックのマフラーから吹き出された黒煙は乾いた大地の砂煙、アスファルトとタイヤが摩擦するゴリゴリという騒音は彼らの生命の主張だった。ついさっきまで、頑なに自らを骨相学の創始者であるフランツ・ガルであると言い張ってやまなかったこの男を、誰も気に止めなかった。ましてや彼がかつて、北日独立紛争時の勇士、ブルース・ウェインであることなど分かりようがない。みすぼらしく汚れたコートの袖に収まった腕は醜く萎縮し、薬物の影が彼の全体を覆う。彼の象徴であった巨大な男根さえ、干物のように股の間にぶら

    ケータイ小説『闇夜(やみよる)』44話 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)43 - 村上F春樹

    絵里子が十六歳で初めて男を知った次の日の朝、彼女自身が後に「トライブ・コールド・クエスト」と名づける能力が覚醒した。まっ黄色な寂寥の中、目を覚まし、シャワーを浴び、下着を履き、電子レンジで暖めたレトルトのコーンスープに口をつけた瞬間に、舌を火傷する自分自身のビジョンが脳裏に焼きついた。絵里子はシャワーから出ると、下着を履く前にレンジを止め、下着を履き、いい火加減になったところのコーンスープを安心した心持でいきなりゴクゴクと飲んだ。そのことは絵里子にとって、すんなりと受け入れられる事態だった。ジャスト・ファクツ。絵里子は約二分先(実際は、地球が太陽の周りを公転する時間の二十六万二千四百七十三分の一の感覚だが、このときの絵里子にとって知る余地もなかった)まで未来を予知することができるようになっていた。絵里子はハッと思い、額をさわった。が、別にハゲてはいなかった。安心パパ。いや、安心した。 一週

    闇夜(やみよる)43 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)39 - 村上F春樹

    ある朝、MJが子供たちに囲まれた楽園から目をさますと、自分が大きな装置の中で一人の白人に変わっているのを発見した。彼は鎧のように堅い床に背をつけ、あおむけに横たわっていた。鼻の横に幾かの冷たい筋が入っていて、顎のラインは鋭さを増している。鼻の横の厚い皮のような肉はいまにもずり落ちそうになっていた。「これはいったいどうしたことだ」と彼は思った。夢ではない。彼はあの夜を境に変わったのだ。 MJは軍の研究員であった。彼は戦争の後始末に追われていた。偽りの平和と知りながらも任務に忠実に、彼は自分が手を貸した殺人兵器プロジェクトの卵たちを「条約」に基づいて処理していた。ナインインチネイルズ、削除。ヘアカット100、削除。カジャグーグー、削除。モノクロームセット、削除。電脳にインしながら作業を進める彼に部からメールが入った。MJの電脳には攻性防壁「スクリーム」が待ち構えていて侵入者を見張っている。

    闇夜(やみよる)39 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)38 - 村上F春樹

    歴史?」 シャマランは聞き返した。あまりにも大袈裟で、概念的過ぎる名を名乗った男の神経が正常なものかどうか測りかねたのだ。 「そう。歴史だ」 男は繰返した。 「気になるか?」 男の問いかけに対して、シャマランは黙ってうなずいた。 「じゃあ、少し俺の話をしてやろう。俺がなぜ歴史なのか。文字通り、俺は歴史なんだよ。今俺たちがいる日列島のなかに2つの国が生み、世界の一部を変えたあの戦争を含んだ歴史は俺そのものなのさ――こんな風に話してもまだお前には理解ができないだろうがな。この話を理解するには、ちょっとした忍耐が必要だ。お前が話を聞いていたあの嘘つき先生には、それがちょっと足らなかった。だから、こんな地下に落ちちまったんだよ。 セカンドインパクトを知ってるか?あの戦争よりも随分前の話になるが、あのとき俺はオホーツク海の蟹漁船の乗組員のひとりに過ぎなかった。しかし、あの日以来俺は一種の予知能力

    闇夜(やみよる)38 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)34 - 村上F春樹

    鳥取第一体育館の中央に造られた特設リングにバットマンが舞い降りる。オレはすっかり目が点だったが、バットマンとレンの様子を冷静に見つめようとしていた。 「TAIMAHHHHHHHHHHH!!!」 叫び声とともに客席からサングラスの大男が立ち上がる。いや、サングラスではない…と思った瞬間その眼のあたりからレーザー光線のようなものが発射されてリングのバットマンを襲う。バットマンは華麗なイナバウアーを披露するとビームを避ける。ビームはリングのロープを焼き、反対側の客席へと照射されて、親子連れ四人家族の小学生くらいの息子の頭を貫通し、息子は直立したまま脳漿を周囲に撒き散らし悲鳴が上がる。オレの2.0を超える視力は完璧にそれを捕らえていた。ビームをきっかけに館内は阿鼻叫喚のパニック状態に陥る。人々が叫びながら出口に向かう。レンも一目散に後方に向かって走り始めるがオレはバットマンから目が離せない。 バッ

    闇夜(やみよる)34 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)33 - 村上F春樹

    何度呼び鈴を鳴らしても羽鳥の出てくる様子がなかったので私はミドルキックを羽鳥の部屋の分厚い扉へお見舞いした。私はまだ鳥取市内のすべてを掌握していたし、羽鳥のケータイのGPSがこの部屋を指し示しているのをもわかっていたから自信を込めてキック。扉が壊れたら?何度も鳴らしたのに出てこない羽鳥が悪い。マジガンギマリ当たり前。乙女キックを受けた扉はゆっくりと部屋の内側へ倒れ、私は足を中へと踏み入れる。ガゾゾゾジョリジョ。引き摺るような音が暗闇からする。おかしい。部屋の灯りは点いている。私は目を凝らす。暗闇ではない。巨大な黒い物体から音がしている。ジョジョジュオ。崩れた球体。黒く細いワイヤーが球体を支えつつ移動している。羽鳥の声、もうそれはかなり微弱になってはいたけれど、この黒い物体のなかからした。私は黒い物体に近づき手を伸ばす。すると黒い物体の一部がびょっと伸びて私の右手の指先から肘までを掴んだ。細

    闇夜(やみよる)33 - 村上F春樹
  • ケータイ小説『闇夜(やみよる)』32 - 村上F春樹

    自作自演の知事誘拐事件に対する北日の暴力による抗議行動が始まった途端、政府の要人たちは次々と東京を離れていった。総理大臣、木村拓哉も例外ではない。というか私の記憶によれば、あのとき一番最初に首都を離れたのは、彼だったと思う。私たちはあのとき、この国が20世紀のなかばに味わった屈辱の再現をテレビ画面の前で待っていた。休戦――といえば聞こえは良いが、それは明確に敗戦だった。しかし、それでも私たちは構わなかった。疲労しきっていたのだ。大人だけではない。私の受け持っていた生徒たち――戦争が始まる前は夏の青草のように溌剌とした表情を見せてくれた彼らの表情にさえ、絶望的な疲労がおよんでいたのだから。みんな悪霊に憑かれたみたいだった。それこそ、私たちは屈辱を待ち望んでいた。函館沖のメタンハイドレート?北日の独立?そんなものはどうだって良いじゃないか。そんなことよりも私たちに必要だったのは休息だった。

    ケータイ小説『闇夜(やみよる)』32 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/18
    キクリン…?!
  • 闇夜(やみよる)31 - 村上F春樹

    オレはツッパリヨシヅミ、つっぱってる。名は斉藤智文なんだけど、みんながヨシヅミって呼ぶのは石原良純ってのに顔がそっくりだかららしい。オレはそのヨシヅミは知らないが、ヨシヅミって呼ばれるのは嫌いじゃなかった。だからヨシヅミだと名乗る。名はいつかその人の質になっていく。今じゃオレはヨシヅミだからオレなんだと思う。 突然だが少しヘビーな話をすると、オレのマブダチでバンドのベースのジョニーの彼女のテルミが始皇帝の連中に姦わされたのが先々週の金曜。テルミが部屋で首を吊ったのが先週の日曜。学校休んでメールも返さないテルミをおかしいと思ってテルミの家に電話してテルミのお母さんの4年ぶりくらいに喋ってテルミが意識不明の状態で鳥取総合病院に入院してるのがわかったのが月曜。オレはすぐにやばいと思ってジョニーを探したが、ジョニーはもう勝手に復讐に行って、あっさりと返り討ちにあってレンチで頭を殴られて頭蓋骨陥

    闇夜(やみよる)31 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/12
    おおおお
  • 闇夜(やみよる)29 - 村上F春樹

    南北会談の舞台として設定されたホテル・ネオ・オークラの「麻生の間」に各地からメディア関係者が詰めかけていた。会談を終えた南北の代表者たちがここで会見を行う予定だったのだ。1年と2週間前の北日連邦の独立宣言、および宣戦布告ぶりに全世界の目がこの極東の島国に集まろとしていた――江戸幕府の時代から中央政権によって治められてきた列島のなかに新しい国家が生まれ、承認された瞬間を目撃しようと。世界中から集まった記者、ジャーナリストたちは歴史的な事件を目前に控え、落ち着かない様子で各々が用意したカメラをいじっていた。 しかし、彼らの期待をよそに冷や汗をかき続けていたのは、日国首相、木村拓哉だった――北日からやってくるはずの7人の県知事たちが姿を見せないのだ。来ならば、7人の県知事たちを載せたVIP用のリムジンがホテル・ネオ・オークラのエントランスに乗り付けるはずの時間からとうに3時間が経過してい

    闇夜(やみよる)29 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/10
    森くん…!
  • 闇夜(やみよる)28 - 村上F春樹

    おはよう。 こんにちは。 おやすみ。 さようなら。 ありがとう。 それは、ただの挨拶。Just a 挨拶。誰でもする挨拶。愛する人に、友達に、好きでもない人に、送る言葉。声をかけるその行為そのものによって、それぞれの宇宙を流れる星は一瞬でもお互いを認識できる。真っ暗な孤独の中では、それですら充分に救いになる。だが、俺はもはや挨拶をする人間を一人も失ってしまったらしい。いつからか、こうなった。これは俺の望んだことのはずだった。何も悲しくはない、そうだろう。そういうことなのだろう。考えないようにしているが、俺はおそらく同性愛者なのだと思う。思い出すのも嫌になるが、小学生のとき、あの修学旅行の夜、最悪な形でそのことは露呈してしまった。 全員が俺を蔑み遠ざける中、綾香だけは俺の友達でいてくれた。俺はそれから綾香のことは少しだけ信頼していた。バスケ部の試合の応援で、興奮しすぎた綾香が拡声器で「オジャ

    闇夜(やみよる)28 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/10
    千葉島…!
  • 闇夜(やみよる)27 - 村上F春樹

    角界を追われたアウトロー力士が繰り広げる大麻相撲中継が終わったので、私は電脳空間「スプロール」に没入、テレビをオフにした。地デジver3.0が呼応して光を失うのをリアルの網膜で見る。再び没入。ミュージックボックスからお気に入りの曲を取り出し電脳で聴く。電気信号化されて染み込んでくるミュージックは壊死した水母のようだ。私ははるか昔、同じことを口に出したことがある。ヨコハマ。中華街。私の言葉を聴いた男は「鼓膜で聴くのと変わらないさ。旦那は凝り性、アーティストすぎるのさ」と言って翌朝、牧D-4埠頭の冷たい海に浮いた。ライセンスを所持していない私はため息をつきながらサウンドを待つ。やれやれ。電脳にため息は存在しない。私が選んだ曲は発表当時は泣かず飛ばずで、3rdシングル「恋がピカピカ」とベスト盤を出した後、TKプロデュースで行方不明になったグループのものだ。曲が流れだす。GIRL NEXT DO

    闇夜(やみよる)27 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/08
    MJ…!!!
  • 闇夜(やみよる)26 - 村上F春樹

    1週間もあればこんな争いは収まるだろう、北日連邦などという馬鹿げた妄想染みた国など消え去ってしまうだろう――という予想はすべて裏切られ、南北に別れた日列島における紛争は長期戦の様相を見せ始めていた。しかし、圧倒的に優勢だったのは世界から孤立していたはずの北日の方だった。その要因のひとつとして、函館沖に浮かんだ巨大パイプが生み出す豊富な資源があげられよう。7人の県知事たちは、中国そしてロシアの闇商人たちと密約を結び、無尽蔵のメタンハイドレートと引き換えに料、兵器、そして傭兵を得ていたのだ。無論、その影にはセルゲイ・オマンコーノフの存在がある。北日連邦は富んだ。まるで千数百年もの昔に存在した奥州藤原氏治世下の栄華が蘇ったようだった。独立宣言の日に燃えるようにして興った祭の晩から、北日の人々の誰もが実際の歳よりも20歳は若く見えるほどに生き生きとし、街には物が溢れ、まるでそこには戦時

    闇夜(やみよる)26 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)25 - 村上F春樹

    「迎合界isファッキンバビロンの呪縛…どうしてこんなブルシットになっちまいやがったんだぜ!?」 窪塚洋介はひとりごちた。こないだまでは、うまく行っていた。出席回数が足りず留年してもう一度一年生をやらされると聞くまでは。そのこと自体はどうでも良かったが、それを機に運気が悪くなったのだ。そう窪塚は信じていた。 去年から始めた商売は窪塚曰く「パーフェクトなアイディア」だった。卍LINEの妹分にあたるチーム「℃-ute」、そこの女子中学生にウリをさせる。商売相手はmixiやらモバゲーやら旧世代のSNSいついて来る中年男たち。完全会員制と称して個人情報を必ず聞き出す。多くの金を落とす常連客は優遇しサービスする。窪塚自身が女をオヤジの家までバイクで送ることすらあった。一度や二度しか利用しなかったオヤジは、卍LINEのメンバーが逆に強請りをかける。大して金にならないケースもあったが、窪塚たちは徹底的

    闇夜(やみよる)25 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/04
    ヤーマンリスペクト!!!
  • 闇夜(やみよる)24 - 村上F春樹

    You dont know how you got here You just know you want out Believing in yourself Almost as much as you doubt Youre a big smash You wear it like a rash Star Oh no, dont be shy Theres a crowd to cry Hold me, thrill me, kiss me, kill me (U2-Hold Me, Thrill Me, Kiss Me, Kill Me) シノブのメールには大仏魂の画像が添付されていた。大仏魂。鳥取城址にそそりたつヒゲ付きのインチキ大仏。鳥取の恥。馬鹿っぽくて見るのもイヤなのにそれでもそこへと向かう私は友達思い。エンジン音ズババババババババババ。「こんなこともあろうかと思って」とか言っ

    闇夜(やみよる)24 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/09/03
    ギャー お、おきゃだくーん!ちょっと先生!!!
  • 闇夜(やみよる)21 - 村上F春樹

    ニコラスが死んだ次の日からキクリンは何度めかの登校拒否になった。たくさん尋ねたいこともあったので、陰毛はボーボーと繁っているくせにケータイを持っていないキクリンのアパートを何回か訪ねたけれどいつも留守だった。こないだ市内で暴れ回ってた変態超人たちも、いかにも雑魚っぽいロビンだかロビンマスクだかバラクーダだか以外にはめっきり目撃されなくなって落ち着いちゃった。たぶん鳥取の夏の暑さは全身タイツにはキツいんだと思う。 エロ店長のニコラスが死んで慢性的なセクハラからは解放されたけれど私はずどーんとどっぷり落ち込んでいた。そんな私を慰めるようにカンチと羽鳥のバカコンビが慣れなれしく私に声を掛けてきた。 「俺たちとキャッチボールやろうぜ!」 「やろうやろう!」 この二人いつの間にこんなに親しくなったんだろう。羽鳥なんてスネオっぽい態度になってるし。なーんて思いつつも「いいよーやることないからー」とボラ

    闇夜(やみよる)21 - 村上F春樹
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    yoneyacco 2008/08/31
    おせんちゃん…てかSPって!ちょっと!
  • 闇夜(やみよる)20 - 村上F春樹

    全世界に向けて「北日連邦」の正式な独立宣言をおこなうはずのテレビ放送は予告していたとおりの時間に始められた。時刻は午後12時ちょうど。それはちょうど前日に電波ジャックによる独立宣言がおこなわれたのと同時刻だった。 最初に画面へと映し出されたのは宮城県にあった古ぼけた野球場である。これはあるプロ野球球団のホームグラウンドとして使用されていたものだったのだが、老朽化しひび割れたコンクリートや手入れのされていない芝(というか、雑草だらけの野原のような状態だ)からはかつて大勢の観客を楽しませていた輝かしい時代の面影は微塵も感じられなかった。しかし、カメラはその廃墟のような野球場を埋め尽くさんばかりに集まった人々の姿を映し出す。観客席にも、フィールドのなかにも人、人、人、人の群れ。彼らはこの演説のために東北7県、そして北海道からわざわざ集まっていた。圧倒するような黒山の人だかりに、放送を観ていた人

    闇夜(やみよる)20 - 村上F春樹
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    yoneyacco 2008/08/28
    カトちゃん…!
  • 闇夜(やみよる)19 - 村上F春樹

    ユイファは、今日が自分の40歳の誕生日であることに夕飯の支度をしながら気づいた。ふと、自分の半生を振り返る。日に来てから20年、何もなかった。ただ我慢をするだけの味気のない日々だった。ユイファは深いため息を吐いた。最近は何もやる気がしないし、いつも心の中は悲しみでいっぱいだ。自分がそんな状態であることをユイファは初めて自覚した。今日やることを片付けなければ。洗濯物を取り込み、息子が帰るまでに夕飯を作り終える。まずはそれだけだ。それだけを、まずは…。 ちょうどロンドンオリンピック開催から東京オリンピック開催までの4年間。中国では後に魔境革命戦争と呼ばれる大きな内乱があった。結果として、いくつかの省や県が中華人民共和国からの独立を勝ち取ったが、旧雲南省中部に位置する小国「ジッタリンジン」での人民たちの生活は極貧の中にあった。 福島県を拠点とする犬山組系広域暴力団「影虎組」は国際結婚仲介業者「

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  • ケータイ小説『闇夜(やみよる)』18 - 村上F春樹

    快感にふやけるぐらいに浸りながら夕空に向け機関銃をババババババと乱射気味に威嚇射撃する私を携帯のバイブが邪魔をした。私は仕方なしに電話をとって液晶を見た。「非通知」 つまらない話だったら速攻切ろう。だって乱射したいんだもの。「もしもし…」無言。非通知で掛けてきて無言なんて私の怒りをマッドマックスにするつもり?「えーと。どちら様ですか!?今ちょっと立て込んでるんですけど!!」「突然ごめん。僕は羽鳥隆之。いや、僕はロビン…」は?ロビン?恋に破れたか夏の暑さにやられたかしらないけれど同情する暇もないので適当に電話を切る。私は機関銃撃つので忙しいんだ。よーし景気付けにもう一丁。バババババ。カイカン。 「次、来るぞ」キクリンから警告。 正門のほうを見やると全身タイツのサイクロプスの両目からビームが発射されるところだった。私の威嚇効いてない。飛んできたビームを私とキクリンは華麗に左右に別れて飛んでかわ

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    yoneyacco 2008/08/26
    全米も泣いた
  • 闇夜(やみよる)17 - 村上F春樹

    福島県桧枝岐村から日の全土に向けて飛ばされた電波が止むと、お茶の間にはそれまで映っていた番組が戻ってきた――ある家庭ではCGで再現された森田一義の『笑っていいとも』が、ある家庭では何十年も前に体の一部を機械化することによって人間機械と化したみのもんた2.0の『思いっきりテレビ』がいつもどおりに画面に映し出された。その次の瞬間、巻き起こったのはテレビ局へのクレーム電話の嵐だった――「今、映りこんだ映像は何だ?」「冗談が過ぎる!」。全国のテレビ局の電話対応室に視聴者からの電話が殺到する。北海道県知事、杉村太蔵がおこなった北日連邦独立宣言を正確に受け止めることができたもの、というよりもむしろ真っ当に受け取ることができたものは誰一人としていなかった。杉村の宣言を誰もが何かの間違い、たちの悪い冗談だと思っていた。 15分後、東北新幹線の線路が爆破されるというニュース速報が入ってくるまでは。 新白

    闇夜(やみよる)17 - 村上F春樹
  • 闇夜(やみよる)16 - 村上F春樹

    「バットマン・マキシマム・ザ・ホルモン・フェノメノン!」 バットマンの腕から剛毛だかなんだかよくわからない針の弾丸がジョーカーと呼ばれたピエロ男に向かって発射される。 「殺った…!ウヒヒヒ。死ね死ね死ね死ね死ね死ね」 バットマンは突然、饒舌になったようだ。顔をチラ見すると、勝利を確信したのか、例のニヤニヤ笑いを浮かべているぞ。視線をジョーカーに戻す。ジョーカーは必死にマシンガンで針弾を打ち落としている。バットマンの腕からは、針弾がやまない…って、バットマンの腕から煙が立ち込め肉がなくなり骨が露出してる!どんな理屈かわからないが、針弾を打つたびにバットマンの腕の肉がなくなっているのだ。しかしバットマンはニヤニヤ笑いをやめずに針弾を撃つ続けている。カラカラカラカラ。あっ、ジョーカーのマシンガンは弾切れのようだ。僕も勝利を確信する。っていうか、勝利なのかな。そもそも僕とバットマンは仲間なのだろう

    闇夜(やみよる)16 - 村上F春樹
    yoneyacco
    yoneyacco 2008/08/22
    HA------!!!!