将棋のプロの公式戦で、盤上では反則などのトラブルがなく、最も短い手数で終局した記録は、何手でしょうか? 現在のところ、最短の例とされるのは▲佐藤大五郎八段-△中原誠名人戦(1974年8月19日、棋聖戦本戦トーナメント1回戦、肩書はいずれも当時)です。 まず最初に、その終局図を見ていただきましょう。 わずか10手目。中原名人の△4二玉を見て、佐藤八段は投了しています。 駒をただで取られてしまったなどの、重大なミスがあったわけではありません。 まだ序盤とも言える段階です。なのに佐藤八段は、どうしてここで投了してしまったのでしょう? 「名人に失礼なので投了」という伝説 佐藤大五郎九段(1936-2010)は、順位戦ではA級に2期在籍。1965年には王位戦七番勝負で大山康晴王位に挑戦したこともある実力の持ち主でした。豪快な振り飛車党として知られ、「薪割り流」の異称がありました。 対して中原誠16世