→紀伊國屋書店で購入 「無言で語る」 やっぱりこの人は違うな、と思う。 「うまい」というのは詩人の場合はあまり褒め言葉にはならないのかもしれないが、谷川俊太郎については、つい「うまい」と言いたくなる。それが嫌な意味にもならない。 表題作である巻頭の「私」という連作は、「自己紹介」という作品から始まる。 私は背の低い禿頭の老人です もう半世紀以上のあいだ 名詞や動詞や助詞や形容詞や疑問詞など 言葉どもに揉まれながら暮らしてきましたから どちらかと言うと無言を好みます 五行連句の詩なのだが、こんな調子でぶつぶつ言っているようで、連句の最後の一行にかけては必ずちょっとひねる、というパタンになっている。ただ、ひねりつつも言いたいこともしっかり言う。三連目の終わりの「私にとっては睡眠は快楽の一種です/夢は見ても目覚めたときには忘れています」もなかなかいいが、とくに最後の連が、うまい。 ここに述べてい
![『私』谷川俊太郎(思潮社)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/9edee1d0f615cd8881221d8605e6e17dbc857b5e/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2FK%2FKinokuniya%2F20180502%2F20180502202131.jpg)