幸田露伴のエッセイ集に「努力論」というものがある。岩波文庫の緑版に入っていて、今でも気軽に手に入れることができる。これは一言でいうと、約100年前にかかれた、「努力」を主題にしたいわゆるライフハックス本であり、かつ人生論と幸福論が一緒になったものである。 序から含蓄がある。露伴によると努力には二種類あるという。直接の努力と間接の努力である。直接の努力とは「当面の努力で…尽心竭力(けつりょく)」の努力であり、間接の努力とは「準備の努力、基礎となり源泉となる」努力であるとする。つまり試験の受験に例えると、直接の努力とは試験会場でする努力であり、間接の努力とは試験までにできるかぎり自分の能力を訓練する努力である。このように書いた後に露伴はいう。 努力の生ずる果が佳良ならざること…は努力の方向が悪いからであるか、然らざれば間接の努力が欠けて直接の努力のみが用いらるるためである。 まさに、その通り!