『帝国』の共著者として有名なアントニオ・ネグリに、来日の直前になって入国許可が出ず、関連行事がキャンセルされた。これについての抗議声明が、主催者側から発表された。私はこの事件の経緯も知らないし、法務省がどういう理由で彼の入国を拒否したのかも知らないが、『帝国』の原著を、あの9/11の直後に読んで衝撃を受けた一読者として、ひとこと感想を書いておきたい。 私は、書評であまり大げさにほめるのは好きではないが、2003年に『帝国』の邦訳が出たとき、週刊ダイヤモンドの書評で「現代の『資本論』」と絶賛した。この評価は、今も変わらない。サヨクにありがちな「反グローバリズム」とか何とかいう幼児的な議論ではなく、グローバル化を超えた先に新しい世界秩序を展望する彼らの思想は、マルクスを(いい意味で)継承するものだ。 特に、今回の事件との関連で興味深いのは、『帝国』で彼らが主張したグローバルな市民権という思