岡田有希子の遺体が四谷署に着いたのは十二時四十分だった。 同じ時刻、サンミュージックでは相沢秀禎を囲んでスタッフの緊急会議が始まった。 その間にも報道陣が続々と「大木戸ビル」に押しかけている。 各テレビ局のスタッフが場所を取り、記者会見の準備をそそくさと始めている。誰もが興奮していた。会場にあてられた六階の会議室は異様な熱気に包まれていた。なかには「岡田有希子」の顔すら知らない記者がいる。 「どんな曲、歌ってる娘?」 明らかに「アイドル」の取材とは無縁に見える一般紙の遊軍記者もかなりいた。 「いや、俺も全然知らないんだ。とにかく四谷に飛べと……」 その会話からも事件の異常さが感じられる。 記者会見が始まったのは午後一時三十分である。 出席したのは相沢秀禎社長、福田時雄専務、溝口伸郎マネージャーの三人だった。 「ふだんから何か悩んでいたことは?」 福田専務がひと通りの経過報告をした後、ひとり