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ブックマーク / hankinren.hatenadiary.org (4)

  •  恋ニ酔ヒ、愛ニ死ス ―「らも 中島らもとの35年」 中島美代子・著 ― - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    「中島らもが、死んだ」 平行線のままのどうしようもなく暗い話の最中、ふいに電話の向こうの男がそう言った。 電話の相手は、私が19歳の時に出会った私の初めての男。私はその頃、彼に貸す為に借りたサラ金の返済がどうにもならなくなり、全てが親にバレて実家に戻って罪悪感と自分自身の愚かさと未来の見えなさでグチャグチャになっていた。それでも何とか金を少しでも返して貰えないだろうかと知人を通じて彼に交渉していた。直接話すと私は「負けて」しまうから知人に間に入って貰ったのだ。 知人から連絡が来た彼は逆ギレして私に電話をかけてきた。「返して」「無いものは返せない、それに俺はお前の欲しいものを与えてやってたじゃないか」何十回も繰り返したどうしようもないやりとりにお互いうんざりし疲れてしまい沈黙が訪れた。私は泣き疲れ怒鳴り疲れていた。その沈黙を破り、ふいに彼が中島らもの死を告げたのだ。 彼は一時期、小説家になる

     恋ニ酔ヒ、愛ニ死ス ―「らも 中島らもとの35年」 中島美代子・著 ― - 花房観音  「歌餓鬼抄」
    zenibuta
    zenibuta 2011/05/15
  • 優しい恋人 - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    友人が、「死にたい」と言ってきた。何故死にたいのか聞くと、「将来が不安で、生きていたくない」と言う。 一日に何度も、死にたいと思うそうだ。でも、自殺する勇気は無いので、どうか楽な方法で事故で死ねないだろうか、と考えているらしい。 将来の不安、それは誰もあるよ、と簡単には言えない。実際に、そのことが原因で自殺する人間はあとを絶たないのだから。 私も、フっと気を許すと、絶望が入り込むことはあるよ。ちょっとした心の隙間に、絶望が入り込んで、体も心も犯す。だから、気を許さないように、楽しいものを見つけて、欲望を糧にして、生きるようにしている。ニュースを見ても、絶望したくなるニュースばかりだ。これからどうなるんだろうか、この国は、もっともっと悪くなっていくとしか思えない、と、不安になる。 そして何よりも彼女を不安にしているのは、来なら彼女の心の支えになるべき彼女の「恋人」の存在だ。彼女の恋人は、彼

    優しい恋人 - 花房観音  「歌餓鬼抄」
  •  AV女優・森下くるみ『すべては「裸になる」から始まって』 - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    画面の向こうで裸になり、セックスをする女達。彼女達の仕事は、「AV女優」。 私はAVを見る。「男の欲望」の為に作られたアダルトビデオを見る女だ。誰かに頼まれて見ているわけでもない。仕事で見ているわけでもない。自分の意思で見ている。お金を出して購入し、アダルトビデオを見ている。 女がAVに何を求めるか、何を見ているか。それは人それぞれだろう。男優に欲情しながら見ている人もいるだろう。性的幻想を映像化する創り手である監督に焦がれて見る人もいるだろう。女優に自分を投影して見る人もいるだろう。ただただ、そこで繰り広げられる性の世界に羨望しながら見る人もいるだろう。 女がAVを見ているというと、女優に自分を投影して男優に「AVのようなことをされたい」から見ているのだろうと捉えられて戸惑うことがある。それを否定はしないけれども、私はどちらかというと男優になり、女優とセックスしたいという欲望の方が強い。

     AV女優・森下くるみ『すべては「裸になる」から始まって』 - 花房観音  「歌餓鬼抄」
  • 巷に雨の降る如く - 花房観音  「歌餓鬼抄」

    巷に雨の降る如く 我が心にも涙降る かくも心に滲みいる この悲しみは何ならん P・ヴェルレーヌ 「雨」という映画がある。あるいは「雨の欲情」。原作はサマセット・モーム。舞台は雨季の太平洋の島。そこにやってきたジョーン・クロフォード(マレーネ・ディートリッヒいわく、ギョロ眼の醜い女。そういうディートリッヒは、三島由紀夫に西洋版おかめ呼ばわりされてるが)演じる娼婦、それに群がる男達、それを非難する敬虔な牧師夫婦。しかし牧師は神の名において、性の快楽に溺れる享楽的な男達と娼婦を更正させようとする。一度は更正して神の御子となったかのような娼婦。しかし、降り続く雨と、祭祀的な太鼓の音の中、最後には、牧師も娼婦の誘惑に陥落され、己の性欲に負けた絶望で海に身を投げ命を絶つ。 私には血の繋がった兄や姉はいない。しかし、兄のような人が一人いた。19歳の時に出会った三つ上のその人は、私に仕事を教えてくれた人で

    巷に雨の降る如く - 花房観音  「歌餓鬼抄」
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