4月27日夜、大型連休を迎えた大阪市中心部──。夏のような暑さや、浮足立つ街の喧噪と打って変わり、ある料亭の一室では張り詰めた空気が漂っていた。 「私は会長職を辞める。あなたも決断をするべきだ」 この日、海外出張から帰国したシャープ会長の片山幹雄が、テーブルを挟んで向かい合っていた社長の奥田隆司にそう詰め寄ると、同席していた経営幹部らは思わず息をのんだ。 昨年4月に社長に就任した奥田に対して、経営幹部の不満はもはやピークに達していた。 経営危機の真っただ中にあって、事業計画策定では「経営コンサルタントの意見を取り入れて」と消極的な姿勢を取ることが多く、プレゼンテーションの訓練を受けても、会見では原稿の棒読みを繰り返す姿は受け入れ難いものだった。 一方で、主力の液晶事業を委任された片山は、独自の人脈を使って海外の大手メーカー首脳との提携交渉に奔走。すでに代表権も返上していたが、依然として社内