米株市場は先日ついに史上最高値を更新したらしい。 その要因として雇用関係の指標が予想より良かったというような理由があげてある記事が多い(参照:米株市場はダウが再び最高値、雇用情勢改善への期待で)が、それらは単に目先の「材料」視されただけでそのベースにあるのはFRBによる金融緩和が当面継続するという市場の見方であり、一言でいえばバーナンキプット効果だと筆者は考えている。 大体今回の指標が少しくらい予測を上回っていようが、上記の記事のタイトルにもあるように、あくまで「雇用情勢改善への期待」であって、雇用情勢が実際に改善されたわけではない。 1月のデータを見ても失業率は依然8%近い水準であり、それだけでも雇用情勢の悪さは明らかであるが、実態はこの数字以上に悪い可能性がある。 下図は1980年以降の米国の雇用人口比率(Civilian Employment-Population Ratio)グラフ
2013年03月07日11:17 カテゴリ経済 3種類のアベノミスト このごろ、いろいろな場でアベノミクス支持者や批判者と議論するが、批判者の意見がほぼ同じなのに対して、支持者の意見はいろいろにわかれているので、次の3種類に整理してみた(ややテクニカル)。素朴な貨幣数量説:「日銀が準備預金を積み増せば物価が上がる」と信じる19世紀的なマネタリスト。最初に安倍首相を説得したとされる中原伸之氏をはじめ、実業家や政治家はほとんどこれ。渡辺喜美氏のように「経済学の本は1冊も読んだことがない」と公言し、耳学問で日銀バッシングをしている連中が多い。 渡辺氏の情報源は高橋洋一氏だが、他にも馬淵澄夫氏など、自称経済通の政治家が多い。村上尚己氏のような証券アナリストにも多いが、マネタリーベースとマネーストックの区別もついてないので、学問的には問題にならない。いっそモリタクのようにお笑い芸人に徹したほうがいい
2012年10~12月の実質GDP(国内総生産)の対前期比成長率(季節調整系列)は、マイナス0・1%となった。年率換算では、マイナス0・4%だ。7~9月期の対前期比成長率マイナス1・0%に比べて絶対値は減少したものの、4~6月期以降のマイナス成長が続いていることには変わりはない。 「自民党政権の誕生で日本経済に転機がおとずれ、低迷状態から脱却して明るい見通しが開けつつある」と言われることが多い。しかし、現実に生じていることは、それと正反対だ。7~9月期に比べて、実質GDPは増えたのでなく、減ったのだ。ただ、落ち込み方のスピードが低下しただけのことだ。落ち込みつつあるという事実に変わりはない。 需要項目別に見ると、マイナスの絶対値が大きいのは、前期に引き続き輸出であり、対前期比成長率はマイナス3・7%となっている。年率換算ではマイナス14・0%だ。11月頃から顕著になった円安にもかかわらず、
いよいよアベノミクスでリフレ政策が実施される見込みとなったことで、これまで「マクロ」な話として議論されてきたリフレ政策の個人レベルでの影響に注目が集まり始めている。 その中でもやはり注目を集めているのはインフレが進む中、それ以上の割合で給与が増えるのか、つまり実質賃金が上がるのかどうか、である。 マクロ的な観点からみれば、リフレ政策における安倍政権のブレーンの一人である浜田宏一・内閣官房参与がインタビュー(参照)で率直に語っているように、高止まりした実質賃金を下げることがインフレ政策の狙いの一つであることは間違いないだろう。 そのインタビューの関連部分を引用(太字は筆者)すると 名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない ――では、こうした金融政策をやれば、経済はどのような経路で上向くことが考えられますか。デフレから脱却して「名目成長率」が上がり、それがどう「実質成長
(2013年3月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 日銀は新たなチームの指揮下で金融政策を大きく転換することになる〔AFPBB News〕 日本の安倍晋三首相が絶え間なく世間を驚かせている。首相が日銀のトップに指名したチームは、これ以上ないほど急進的だ。日銀の過去の消極性を批判してきた黒田東彦氏が金融政策を担うことになる。 間違ってはいけない。黒田氏は年率2%のインフレを実現したいと思っているだけでなく、この目標は中央銀行の力で達成できると考えているのだ。 黒田氏は政府および新副総裁になる岩田規久男、中曽宏両氏の支持も期待できるだろう。日銀は不満を漏らすかもしれないが、政策の転換は確実なように見える。 問題は、新たな政策が奏功するかどうか、だ。そして実際、「奏功する」とは何を意味するのだろうか? 日本が置かれた奇妙な状況 まず、日本の奇妙な状況に留意するところから始めなければならない。
円安による値上げは、家計に響きかねない 安倍政権の経済政策アベノミクスによる円安で、輸入品などの価格が上がっている。ガソリン・電気代をはじめ、小麦や冷凍野菜などにも広がる。円安は輸出企業の業績を良くするプラス面もあるが、身の回り品の値上がりは、家計を圧迫しかねない。 農林水産省は27日、製粉会社などに売る輸入小麦価格を4月から約10%上げると発表。米豪などの不作に円安が追い打ちをかけた。ほぼ輸入に頼る小麦でつくるパン、うどんなどは今後、高くなる可能性がある。 財務省が27日発表した1月の品目別貿易統計でも、輸入食品の値上がりが目立つ。ポテトなどの冷凍野菜、家畜のえさ用のトウモロコシの価格は、昨年10月から10%以上も上昇した。 店頭では輸入食品の値上がりの動きはまだ見られないが、関東の中堅スーパーは「一部の品目で、仕入れ先から値上げの打診を受けた」(仕入れ担当者)と明かす。 続きを
(2013年2月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 投資家は今、1つのジレンマに直面している。日本では来年度に約25兆円の5年物国債が満期を迎える。 この大量の国債のクーポンレート(表面利率)は、加重平均で見れば約1%。最近の国債入札で得られる利回りのざっと6倍だ。 ということは、投資家は利金収入を維持するために、単純に同じ年限の国債をこれまでの6倍購入すべきなのだろうか? それとも、利金収入が少しでも多くなるように、償還された資金でもっと年限の長い国債を買うべきなのだろうか? いずれにしても国債相場にはプラスだと、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ債券ストラテジスト、石井純氏は指摘する。 インフレ見通しなどどこ吹く風の債券市場 「アベノミクス」の国債増発を懸念する向きもあるが、市場では逆に需給が逼迫するとの見方が出ている〔AFPBB News〕 そしてこの状況は、新首相の安
安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の効果で大幅な円安・株高が進み、景気回復期待が高まっている。ただ金融緩和の拡大による副作用として長期金利が急上昇しないか。みずほ総合研究所チーフエコノミストの高田創氏に聞いた。デフレ心理深く――日銀が大胆な金融緩和にかじを切りました。「いったん国民にデフレ心理が定着すると、脱するのは容易でない。例えば米国でハリケーン『カトリーナ』の被害が出た直後は地元
「アベノミクス」もしくは「アベノミクスへの期待」は、11月16日の衆議院解散以降の円安と株高を演出しているのみならず、金融市場の改善を受けて今では実際の各種経済指標も上向きの傾向にある。ただし、おおげさに喧伝(けんでん)されるほど日本の株高が世界で突出しているわけではない。(フジサンケイビジネスアイ) 11月16日を100とした場合の2月8日のMSCI株価指数(世界の主要市場のドル建て株価指数)は、日本112.28、米国111.81、英国を除く欧州116.43、日本を除く東アジア114.42である。ここまでのアベノミクス効果は世界市場の回復を味方につけたものであったことは、認識しておく必要がある。 一方、現時点までのアベノミクスは政策宣言だけであり、いわばアナウンスメント効果だけの成果であって、実際に円安効果が企業収益などに影響し始めるのはこれからだろう。また「三本の矢」といわれる(1)大
本誌独占インタビューノーベル経済学者は指摘するポール・クルーグマン「1ドル100円超え、アベよ、これでいいのだ」 戦争しなければ大丈夫 いま安倍晋三首相が推し進める経済政策・アベノミクスに批判の声が聞こえ始めている。その代表的なものが大胆な金融緩和をすると「ハイパーインフレ(急激なインフレ)」になってしまうというものだが、まったく的外れだ。 日本と同じように金融緩和をしているここ米国でも、実はハイパーインフレの恐怖が数年前から語られ続けてきた。しかし、現実を見ればハイパーインフレが起こっていないことは誰もが知るところだ。 さらに、私はアベノミクスが唱えられ始めてからのマーケットの動向を見ているが、日本の期待インフレ率はちょうどよい値で推移している。いままで市場が日本の物価についてデフレ予測を続けていたことを考えれば、いまは少しのインフレ期待があることで、むしろ経済にとってプラスに働いている
株式会社武者リサーチ 代表 武者 陵司 代表電話(03) 5408-6818 直通電話(03) 5408-6821 musha@musha.co.jp 〒105-0021 東京都港区東新橋2-18-3 ルネパルティーレ汐留901 (1) 金融政策でデフレは終わり、デフレ終焉は自動的に成長率を高める 脱デフレで日経平均2万円、改革進展すれば3~4万円視野に 日本の「失われた20年」の原因は、長期円高と資産(株・不動産)価格下落が、企業に賃下げ圧力をかけ続けた事にある。その是正に照準を合わせたアベノミクスは妥当である。円安と資産価格高で企業採算が向上し、正常な賃金上昇が復活すればデフレは終わる。 デフレ終焉はそれ自体が構造政策である。20年間続いたデフレは、価格メカニズム(市場価格の変動によって最適資源配分を行う機能)を麻痺させ、潜在需要が大きな成長分野への資源配分を阻害した。ハイエクは「
安倍首相は12日、経済3団体のトップと首相官邸で会談し、「業績の改善を働く人の所得増大の動きにつなげていくことができるかどうかで本格的なデフレ脱却に向かっていく」と賃上げを要請し、財界からも春闘で賃上げに応じる意向が示されたという。こうした政府の働きかけを受け、ローソンは社員の年収を3%引き上げると発表したが、もしすべての企業が要請に応じて3%賃上げしたら何が起こるか、シミュレーションしてみよう。 賃金コストは価格の半分を占めるので、物価は1.5%ぐらい上がるだろう。3%賃上げしてもらった正社員の実質賃金(名目賃金-インフレ率)は1.5%増になるが、これによって労働需要が減るので失業が増える。つまり政府の要請に従って賃上げすると、物価と同時に失業率が上がるスタグフレーションが起こるのだ。 また労働者の8割を占める未組織労働者の名目賃金は上がらないので、インフレで実質賃金は1.5%下がる。雇
政府は12日、首相官邸で「デフレ脱却に向けた経済界との意見交換会」を開く。席上、安倍晋三首相は、経団連、日本商工会議所、経済同友会の経済3団体トップに対し、業績が改善した企業の賃金引き上げを要請する。経済界の協力を得て、従業員の賃上げといった目に見える形で「アベノミクス」の効果を国民全体に浸透させるのが狙いだ。
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