かつての日本には、「一億総中流」と呼ばれた社会がありました。経営者と労働者の所得格差は小さく、「福祉国家」をめざす政策によって貧富の差は是正されようとしていました。国民皆保険の医療保険制度が整備され、平均寿命も伸びていきました。世論を二分した「安保法制」をめぐる政治手法が際立った安倍内閣は、ひるがえって「一億総活躍」というアドバルーンをあげました。 (『「一億総活躍」より「みんなちがって、みんないい」』2015年10月6日「太陽のまちから」) 「一億総活躍」という言葉に実感がともなわないのは、現在の日本社会が格差と不平等が拡大するだけでなく、世代間連鎖を運命づけられているように変質しているからです。製造業への派遣労働への規制が撤廃され、非正規労働がとめどなく広がった結果、リーマンショック後には20代、30代の若者たちが失職しただけでなく、住まいを失う事態が社会問題化しました。こうした不安定
何とも悲しくなるニュースに、考えこんでしまいました。「子どもの貧困対策」は、安倍首相の唱導する「一億総活躍国民会議」でも重要テーマとして議論されていると聞きます。少子化が急激に進行しているのに、子どもの貧困率は深刻なままで改善の兆しが見えていません。そこで、「子どもの未来応援基金」を呼びかけたというわけです。 安倍晋三首相らが発起人となり、子どもの貧困対策として10月に立ち上げた民間基金で、政府が期待する経済界からの大口寄付が1件もなく、寄付総額は11月末時点で計約300万円にとどまっていることが5日分かった。 2016年度に始めるNPO法人などへの助成事業には億単位の基金が必要とされるが、官民挙げて取り組むとした「国民運動」の看板事業の実施が危ぶまれている。「子供の未来応援基金」は、子どもの6人に1人が貧困状態にあるとされる中、個人や団体の寄付で基金をつくり、貧困対策に携わるNPOなどへ
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