従来、脳の神経細胞は主にグルコース(ブドウ糖)をエネルギー源として機能すると考えられてきた。しかし今回の研究により、神経細胞内の脂肪滴に蓄えられたトリグリセリド(中性脂肪)から遊離した脂肪酸が、シナプス(神経細胞間の接続部)の機能維持に不可欠であることが示された。 研究の発端は、「DDHD2」という酵素(中性脂肪分解酵素)の遺伝子に異常がある患者で、知的障害や運動機能の低下が起こるとの現象だった。研究チームが詳しく調べたところ、この酵素が特にシナプスに高濃度で局在していることを発見した。 研究チームは、マウスの神経細胞においてDDHD2の活性を薬剤により阻害する実験を行った。結果、通常はほとんど観察されない脂肪滴が急速に蓄積した。24時間の処理により神経細胞内の脂肪滴は5倍以上に増加し、約70%のシナプスに脂肪滴が出現した。これは、正常な状態では脂肪の合成と消費が絶えず行われており、DDH
