これはきっと、 山田尚子監督にとっての、 ヒーリング・ムーヴィーなのだ。 この穏やかで、静かで、ひそやかな、 それでいて、やたらカット割りの多くてせわしない、 幸せなようでいて、どこか翳のある映画を観ながら、そう思った。 山田監督が、結局のところ、 あの事件のことをどう考えているか、 僕にはわからない。 だけど、世界が終わるような、 何もかもが根こそぎ奪われるような、 それこそ立ち直れないほどの強烈な打撃を その身に受けただろうことは容易に想像がつく。 仲間を喪っただけではない。 「女性監督」をめぐる犯人の身勝手な動機は、 きっと彼女を打ちのめしたはずだ。 本当に、あんなにひどい話はない。 京都アニメーションという会社は、 そんななかで、見事に甦ってみせた。 「不死鳥のように」とまではいかないかもしれないが、 石原監督以下スタッフは、『メイドラゴン』『ツルネ』『Free』『ユーフォ』と律儀