以前勤めていた会社で、僕は、社長命令と職業的良心との板挟みに苦しむことが多々あった。 おそらく、株主からの圧力もあって利益を重視しなければならなかったのだろうが、かなり黒に近いグレーな行為を、経営判断という一言で片付けて強引に推進しようとする姿に、当時の僕は強い違和感を覚えていた。 最も不思議だったのは、なぜ社長は、そんなに物事を自分に都合よく解釈できるのだろうか、ということだった。しかも、それを詭弁とも思わず、正論であると思っているようだった。 もちろん、なにかの強いプレッシャーに晒された場合、判断にバイアスがかかるということは理解していたが、そのバイアスに自分自身が侵されていることに全く気付いていない様子なのが、不思議で仕方なかったのだ。 黒に近いグレーであることをしっかり理解した上での「経営判断」なのであれば、少なくとも僕は社長の判断力を疑ったりしなかったし、社長を信頼して命令を遂行