連載第6回の余論で筆者は、今話題の「現代貨幣論(MMT: Modern Money Theory)」についてこう書いておきました。 「財政が魔法の泉であるかように説く、通俗的な紹介がまかり通っているようです。しかしMMTは財政赤字を正当化する小手先の政策技法ではありません。本稿では、現代金融論ではなく、現代貨幣論と訳してみせたように、もっと経済の根幹にかかわる問題なのです」 海外メディアでは「金のなる木(Magic Money Tree)」理論と揶揄され、国内メディアでも「異端の経済理論」、危険で極端な主張と非難囂々です。もっぱら非難されているのは、MMTの財政政策の考え方です。 MMTを推奨する評論家の中野剛志氏は『富国と強兵』(東洋経済新報社、2016年)の中で、次のように説明しています。 「しかし、個人や企業といった民間主体とは異なり、政府は通貨発行の権限を有する。それゆえ、政府が自