若い頃の作家石原慎太郎が、政治は茶番でありそれに携わる政治家は豚である、と考えていたことは『狼生きろ豚は死ね』に即して前回に書いた。今回は当時の石原がどんな政治手法を理想として想定していたかを『殺人教室』(「日本」、一九五九年十月号)を中心に見てみたい。この作品が書かれた頃の石原慎太郎は、大江健三郎や開高健などとともに「若い日本の会」を作り、前年には警職法に反対し、翌年には安保条約批准を巡って国会の解散を要求しており、まだ保守的な立場には立っていなかった。 『殺人教室』は、大学生活に死ぬほど退屈した模範的な四人の大学生が、それぞれの得意技能を持ち寄って超高性能のライフルをつくり、究極の刺激を求めて殺人ゲームを始める話である。ライフルは消音無反動で射程距離は二千五百メートルあり、射撃の腕の確かな四人は望遠鏡をつければ二千メートル先の十円玉を精確に射抜くことができる。〈メフィスト〉と名づけられ
橋本健二『新しい階級社会 新しい階級闘争』 赤木智弘と橋本健二の奇妙な一致 赤木智弘の『若者を見殺しにする国』は、売れている。ぼくの『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』の売れ行きなど問題にならないくらいに。だって発売15日で2刷りだよ! この種の本でありえねえだろ。くそう。 いやまあ、それはどうでもいいんだけど(笑)、赤木の同書を読んであらためて思うことは「正社員と非正規雇用の統一戦線はできるか」ということである。 今回紹介する橋本健二の『新しい階級社会 新しい階級闘争』の階級・階層分析を借りれば、「アンダークラス(非正規)」と「正規雇用の労働者階級および新中間階級(管理職・専門職など)」は手をむすぶことができるか、ということだ。 『オタクコミュニスト…』のなかでも述べたが、正社員と非正規雇用の関係については、赤木と橋本の分析は似ている。親和性が高い。 というのは、「正規雇用の労働者階級お
超左翼マガジン『ロスジェネ』が創刊されます すでに、関係者のブログで書かれているのでご存知の方もいるかもしれませんが、掲題の雑誌がかもがわ出版より5月下旬に創刊されます。 編集長に浅尾大輔(作家・元労組専従)、編集委員に大澤信亮(評論家)、増山麗奈(画家)、そしてぼく=紙屋高雪という布陣です。創刊号の主な内容は以下のとおり。 特集=右と左は手を結べるか 討論=赤木智弘×浅尾大輔 「ぼくらの希望は『戦争』か、『連帯』か」 評論=杉田俊介「誰に赤木智弘氏をひっぱたけるか?」 手記=雨宮処凛「生きづらさが超えさせる『左右』の垣根」 論文=萱野稔人「なぜ私はサヨクなのか」 ルポ=紙屋高雪「あなたのとなりの『ウヨク』」 小説=大澤信亮「左翼のどこが間違っているのか?」 アクション=増山麗奈「戦争よりエロス——そして環境へ」 すでに内容についてはここにかかわった人たちがブログで書いていますので、URL
この設問は、もともと野宿問題の授業前に、生徒に対して使うアンケートとして考え出した。 野宿者について生徒がどのような考え方をしているかを探ることを目的の一つにしている。 実際の狙いは、こうした「野宿者が(一般の市民から)よく言われるセリフ」を通して、近代の市民生活を成立させる3つの枠組みを浮かび上がらせることにある。この3つの枠組みが、野宿者に対する偏見・差別の多くを生み出している。 ■野宿者がよく言われるセリフ(あなたはどう考える?) 1・ 公園や路上などの、みんなで使う場所にいるのは迷惑だ。 2・ 仕事をしようともしない。働けばよい。 3・ 努力が足りなかったのではないか。がんばって仕事して貯金していればこんなことにはならなかったのではないか。 4・ 福祉とか、困った人が行くとこがあるのではないか。 5・ 家(実家など)に帰ればいいんじゃないか。 ■以上の「野宿者がよく言われるセリフ」
2000年4月1日から仮に「文書」として Ⅰ―▼1990年10月2日「暴動」 ▼1990年秋「反差別共同闘争」 Ⅱ―▼「2000年12月31日~2001年1月1日」 Ⅲ―▼「2001年2月7日 フリーターは野宿生活化する?」▼「2001年3月6日 フリーターに未来はない?」 Ⅳ―▼「野宿者襲撃論」 という構成で書いてきた文章は、最終的に2つの「フリーター論」と「〈野宿者襲撃〉論」にまとまった。 「〈野宿者襲撃〉論」の「前篇・後書き」で書いたように、ぼくは1986年から釜ヶ崎で日雇労働運動と野宿者支援運動に関わってきて、襲撃の話を日常的に見聞きしていることもあって、この問題に長く関心を持っていた。この文章は、これまで考えていたことをまとめたものである。 「〈野宿者襲撃〉論」は、ぼくが長く考えてきた事の一つの面をすべて投入した内容になっているのかもしれない。そして、2つの「フリーター論」と「野
since 2001.11.3 生田武志 cex38710アットマークsyd.odn.ne.jp ▼スパムメールを毎日多数削除してますが、間違って知り合いや用事のメールも削除してしまうかもしれません。「返事があって当然なのに、1週間しても返信がないな~」というときは、(その可能性があるので)お知らせ下さい。
NHKスペシャル「ワーキングプアIII 解決への道」の感想 ※NHKスペシャル「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」の感想こはちら ※NHKスペシャル「ワーキングプア 努力すれば抜け出せますか」の感想こはちら 07年12月15日放映のNHKスペシャル「ワーキングプアIII 解決への道」を見た。「海外のワーキングプアについて報道するらしい」という話を聞いていたから、「ああ、日本の話はだいたいやっちゃったので、『海外でも広がっていますよ』『海外ではこうしてますよ』みたいなやつかな」というヌルい想像をしていたのだが、「ワーキングプアI」と「II」をつくったスタッフの力を甘くみすぎていた。 そのような、学生のレポートみてえなボケた一般論ではなかった。 日本のワーキングプア問題がいきつく先が予想や推測の中ではなく、すでに「海外」という現実の中に存在しているということ、そして、日本のワーキ
中島岳志『パール判事』 まったく偶然であるが、新聞などの予告をみると、本日(07年8月14日)放映されるNHKスペシャル「パール判事は何を問いかけたのか〜東京裁判 知られざる攻防〜」(午後10時・総合)は、中島の本書『パール判事』の主張をほぼ番組化したものになりそうである(付記:今見た。すばらしい内容。この中島本の中身の反映もさることながら、東京裁判が結論の決まった単なる茶番劇ではなく、判事同士の激しい確執のある、きわめて動的なプロセスであったことが浮き彫りになった番組だった。そして東京裁判の「成果」が平和憲法や国際司法の発展に寄与していることもわかるものになっている)。 ぼくは今、東京裁判について書かれたものをいくつか読んでいるが、東京裁判そのものが膨大な資料があるために、とても「そのもの」を読むところまでいかない。たとえば冨士信夫『私の見た東京裁判』(講談社学術文庫)にしても、裁判の全
綿井 健陽 Web Journal Video journalist / Filmmaker: WATAI Takeharu Updated 2019-02-25 『イラク チグリスに浮かぶ平和』DVD on Sale。発売中 『イラク チグリスに浮かぶ平和』(Peace on the Tigirs) Official HP DVD発売中「Little Birds イラク戦火の家族たち」公式HP 書籍「リトルバーズ 戦火のバグダッドから」(晶文社) ブログ「綿井健陽の逆視逆考PRESS」随時更新中 映像報告・雑誌掲載・講演のお知らせなど ■Twitter ■Facebook ■Blog「逆視逆考PRESS」 ■YouTube[wataitakeharu綿井健陽]チャンネル ■ Yahooニュース個人 ------------------------------------------- ▼
2006年12月10日放映のNHKスペシャル「ワーキングプアII 努力すれば抜け出せますか」は、前作「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」の第2弾。 非常に戦闘的な、言い換えると論争的な中身だった。 前作はワーキングプア(働く貧困層。生活保護水準以下ととりあえず規定されている)の実態とそれを生み出す構造を描いた。これにたいして、「II」はもちろん引き続きワーキングプアの実態を描くのだが(前作に1400通もの反響があり、キャスターの鎌田自身も未曾有の経験だという)、サブタイトルにあるように「努力すれば抜け出せる」という議論に、ルポを通して反論している。 「努力すれば抜け出せますか」という疑問、そして反語として。 「ワーキングプアといっても、努力すれば抜け出せるではないか」――これは自己責任論にもとづく最も有力な議論である。実際にインターネット上でも前作への反響としてこのような議論
2006年7月23日放映のNHKスペシャル「ワーキングプア――働いても働いても豊かになれない」を見た。 「フリーター漂流」では、非正規雇用という貧困をうみだす根源へと迫ったが、今回はこの非正規雇用の問題もふまえたうえで、地域や自営業の衰退、社会保障の貧弱さ、貧困の世代をこえた再生産、「希望格差」など、日本社会の全体像へと広がっていった。 ちなみに「ワーキングプア」とは、「働く貧困層」の意味で、もともとはアメリカで広がっている事態を説明する概念である。 ここでは、「働いているのに生活保護水準以下という人」を指す言葉として使われており、全国で400万世帯とも、それ以上ともいわれている。日本の全世帯の10分の1である。番組では紹介がなかったが、平均世帯人数(1世帯2.36人)で掛けても、1000万人前後がこのような生活を強いられているということになる。 「フリーター漂流」の果てに まず最初に、3
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