「何も変えないでそっくりそのまま移行してくれ、とお客さんが要求してくるプロジェクトが結構多いのです。当社が手掛けている案件の内容を見られるページがあるのですが、直近のものを開くと……。ほら『現行踏襲』と出ています」 2カ月ほど前の2024年8月、とある情報システム開発会社の幹部と雑談していたときのことだ。彼はノートパソコンを開き、管理画面から適当なプロジェクトを選び、顧客からの要望を記載した箇所を見て嘆息しつつ話してくれた。画面そのものは見せてもらえなかったが、その場で確認しつつ話す様子から彼の悩みが伝わってきた。 「現行踏襲ならプロジェクトとは呼べない」とすぐに思ったものの、言っても仕方がないと考え直した。プロジェクトという言葉の成り立ちは「前の方へ(pro)投げる(ject)」だったはずだ。つまりプロジェクトとは将来に向かって何かをぶつけ、何らかの変化を起こすことである。製品の打ち切り