秋から読み始めたもののいろいろな事情でまだ読み終わらない『東京裁判 第二次世界大戦後の法と正義の追求』(戸谷由麻、みすず書房)より。旧日本軍の残虐行為に関する各国の検察団の立証努力を紹介し、さまざまな類型の残虐行為が各戦線で行なわれていたことを検察が立証しようとしたことを指摘したうえで、弁護団の弁護方針について次のように述べている。 検察側の膨大な証拠に直面した弁護側はどのような反駁をこころみただろうか。回答はというと、弁護側は検察側の証拠書類にも証人にも基本的には挑戦せず、南京事件のときと同様、日本軍が広範かつ頻繁に残虐行為をおこなったことを事実として認めたのだった。ただ、弁護側は、「日本国家指導者が個人責任を負う」という検察側の主張に対して争った。日本軍による残虐行為が広範だったとは認める一方、同じ類型の戦争犯罪などは検察側の証拠書類から浮かびあがらないと主張、そして中央政府や軍参謀部