まあ、じっさい良かったからなんだろうけれど。ただし、そのひと個人にとっては、というだけの話。 ああ昔は良かった、最近の若いものはダメだ、というノスタルジーは非常に普遍的なもので、ふしぎなことにダメだダメだといわれていた時代の人々が年長の世代になると、最近の若者は――と言い出す。 古代の石碑にも「最近の若いものはうんぬん」と書かれていた、とかいう話がまことしやかに語られたりしているくらいだ。いったいどうしてこういうことが起こるのか。 客観的に見れば、どう考えても人類の文明は進歩していて、また豊かになっている。「昔よりいまのほうが良く、未来はさらに良くなる」というのが冷静な結論のように思えるのに、どうしてみんな「昔」を懐かしく思い出し、礼賛するのか。 それは実は簡単な話であって、「時代」と「時期」を錯覚しているのだね。ひとがなつかしく思い出すのは70年代とか80年代とかいう「時代」ではなく、「