というわけで、イギリス産ディストピアをひとしきりみたあとは、アメリカ産を見ることにする。 イギリス産とアメリカ産のちがいというのはあるのだろうか。うーん、あくまで感触だけれども、イギリスやヨーロッパのディストピアは、「人間性」というものそのものに対する問いかけを含んでいるように思われる。幸福ってなんだろう、とか、そもそも自由ってなんだろう、とか。バージェスの「時計仕掛けのオレンジ」は人を殺し、レイプする腐った精神すら、それでも「人間性」なのだ、と言う。肯定否定は別にして。翻って、アメリカ産のディストピアはある意味わかりやすい。なにせ、自由を脅かすなら政府自身をも倒せと憲法で謳っている国だ。自由そのものはアプリオリな存在であり、それを疑うというようなことは、あまりない。自由は絶対条件であり、それを錦の御旗にして(まあほんとのところは別にあるにしても)この国が戦争までしているのはみなさん御存知