去る日曜日,移動中の機内で小林章夫(こばやし・あきお)『召使いたちの大英帝国』(ISBN:4896919351)を読む。 19世紀の大英帝国における使用人を視覚的に,かつ手際よく把握しようとするならば,村上リコ+森薫『エマ ヴィクトリアンガイド』(ISBN:4757716435)の方がまとまっている。家事使用人にあった厳格な序列――男性であれば家令(House Steward)や執事(Butler)/フットマン(Footman)/近侍(Valet),女性では侍女(Lady's Maid)/家庭教師(Governess)/乳母(Nurse)/メイド(Maid)――が図示され,そこに森薫による挿絵が添えられているので,視覚的に理解できる。 それに対して本書は,いかにも英文学研究者が書いたもの。労働者たちの賃金のような実態の把握であるとか,仕事の「手抜きの仕方」といったウィットに富んだ視点が多く