≪災害にも奪いきれないものが私たちにはある≫ 東日本大震災で大勢の死傷者を出した宮城県南三陸町。芥川賞作家の川上未映子さん(35)は2年前、仕事のため同じ場所を訪れていた。 「宿泊していたホテルの露天風呂に入浴していると、後から赤ん坊を抱いた母親が入ってきた。その母子は、生命力があふれていて、強い輝きを感じた」 地震発生後の今もなお、その輝きは心の中に深く刻まれているという。 ■驚嘆した強さ 「私たちの中には、津波にも地震にも奪いきれないものがあるんじゃないかと思うんです」 人間の生命力とは何か。生きることはどういうことか。 地震発生後、川上さんが改めて「人の生」について問い直したのが、今回のエッセー集『ぜんぶの後に残るもの』だ。