冷徹な分析と温かい眼差し 今、いちばん中東で注目すべき国はトルコだろう。難民の問題、シリアの将来、クルド人の動向、そしてIS(「イスラム国」)対策、いずれの問題も、この国を抜きにしては語れない。さらに、人口8千万のトルコ自身が重要である。 この重要な国の解説を、著者は中東全体での政治の流れの概観から始める。民主化の流れは、イスラム色の濃い政権を生み出す。しかし、これは欧米には不都合である。イスラム政権は欧米の言いなりにならないからである。それゆえ、欧米は、民主的に成立した政権が軍部によって倒されるのを黙認してきた。その良い例がエジプトである。「アラブの春」後の選挙でムスリム同胞団が勝利を収めた。しかし2013年に軍部が、この政権をクーデターで倒して権力を掌握した。 ところがトルコは例外である。イスラム色の強い政党が民主的に権力を握り、しかも軍部を抑・え込んだ。加えて経済発展を実現させた。そ