株式会社LIGのCTO、高遠(たかとお)は、目が覚めると見知らぬ場所にいた。 足は頑強な鎖で繋がれ、手の届く所にはノートパソコンが一台、置いてある。そして少し離れた所には中年男性の死体が横たわっている。頭から夥しい量の血を流し、まるで熟れたトマトが潰れたような形で死んでいるその男の姿を目の前にして、高遠は不思議と冷静だった。 「ここは…一体…」 人は、自分の置かれた状況が理解の範疇を超えた時、ある意味一番冷静になれるのかもしれない。 目覚めたばかりの重い頭を総動員して、自分が今置かれている状況を理解しようとするが、納得のいく答えは見つからないでいた。 明らかに致死量を超えているであろう血液を流して、男は絶命している。 この男の身に何があったのか、高遠はその貧相な想像力で思い描いてみるが、何も思い浮かべる事が出来ないでいた。 ピロリーン♪ 静まり返った空間に、メールの着信を知らせる音が鳴り響