「勝てない……」と絶望したのは、コント『AED』。これだけ人数がいるのになぜ「影の薄い人間」がひとりもいないのか本当に意味がわからない。主宰の蓮見翔がすべての流れをコントロールしつつ、絶妙なタイミングでツッコミを入れて盛り上がりのポイントを作っているのはかろうじて理解できるのだが、主役も脇役もない、メンバーそれぞれに明確な「役割」と「見せ場」があって、それぞれのひと言でちゃんとドデカい笑いが起きるというのはいったいどういう仕組みなのか、と観ていて頭を抱えた。 「人生の一番いい瞬間」を題材にした『ピーク』というコントでは、セリフでも引用されているのだが、『花束みたいな恋をした』や『愛がなんだ』のような淡いエモエモ恋愛映画の雰囲気を存分に醸し出しつつ、逆説的にそれをイジくり倒すことで、観ている人間の心をガチでキュンキュンさせると同時に爆笑をかっさらっていた。この世に存在するすべての恋愛はこのネ