『窓辺にて』という映画は、カメラワーク、ロケーション、インテリア、衣装……どの要素を見ても、眩いオシャレな質感に溢れている。 画面だけ見れば、パーフェクトで眩い光の結晶のようなシーンが続くが、登場してくるのは「妻に浮気されたのに怒りが湧かない主人公市川茂巳(稲垣吾郎)」「憂鬱に浮気している市川紗衣(中村ゆり)」「市川茂巳の友人でこれまた妻に内緒で浮気している有坂正嗣(若葉竜也)とその浮気相手でタレントの藤沢なつ(穂志もえか)」……といったようにパーフェクトじゃない、今を生きる全ての人たちだ。これまでの今泉力哉監督作品の登場人物と同様に、社会の正しさのようなものからはみ出してしまう人々の魂がそこには見える。 「きっとこの時間はとても贅沢なものだったんだよ」 小説を書くとは気持ちを形作ること。なにかを残すこと。 それは小説に限らず、映画や写真もそうである。生産的な活動である。映画の中の台詞を借