2012年7月17日更新 2012年7月21日よりTOHOシネマズ有楽座ほかにてロードショー 非婚と少子化のこの国で、家庭をもつことに憧憬を抱かせる寓話恋や青春を切なく描くボーイ・ミーツ・ガールはほんの幕開け。おとぎ話として、アニメならではのモーションの躍動を楽しむのもいい。しかし細田守は、「サマーウォーズ」で目覚めた家族に流れるエモーションを深化させた。ここにはしっかりと、人の営みが描かれている。 ヒロインのときめきの対象が、人間の姿をしたおおかみおとこだったという展開に息を呑む。人と獣が混じり合った生き物の末裔という設定はあるものの、人目を忍ぶその姿は単なるモンスターなどではなく、メタファーであろう。人は誰も、少なからず異形を抱えた“おおかみ”である。他者と交わる上で心を閉ざす要因となるその屈折に、彼女は臆さない。異なる存在をまるごと受け入れてこそ愛は成就するという瞬間は、リアルな対人